第5話 きっと気のせい。
「結構長いな」
と長い道のりを進み、やってきたのは絵里ちゃんの家。
時間は.......一時くらい。
あの決意をしてから一週間たった。
当たり前だが、別に義務感からやっているわけではない。ぼくがやりたくてやっているだけだし。あの二人を守りたいって心の底から、美穂さんの話、涙を見たときそう思ったのだ。
それに、絵里ちゃんと話したりゲームするのは普通に楽しいし、美保さんとお話ししたり一緒にお茶したりゆったりするのも心が休まるから好きなのだ。
まぁ、何が言いたいかというと、僕もこの家の人と関わりたいだけなのだ。
「こんにちわー」
と家のインターホンを押すと中からどたどた勢いよく二回から降りてくる音がする。
「雪花お兄さん、久しぶり」
「久しぶりって、まだ、二日しか経ってないよ?」
「それでも、久しぶりなの」
絵里ちゃんは、ドアを開けた瞬間飛び出し、僕に抱き着く。
まるで犬みたいだ。
「もっと撫でて、いいこ、いいこして」
「はいはい」
僕が、無意識で頭をなでると、せがむようにもっともっとと頭をぐりぐりと擦りつける。
「むふふ、さ、中に入って」
「うん」
絵里ちゃんに促され中に入る。
「今日、美保さんは?」
「お母さんは、お仕事行ってるよー。それより、早くゲームしよ?」
絵里ちゃんとゲームをすること数時間、いつの間にか夕方近くになった。
「ねぇ、雪花お兄さん」
「ん?何?」
「今日、おうちに泊まって?」
「え?」
今、泊ってって言った?
「ただいまー」
丁度いいところ?で美穂さんが帰ってくる。
「絵里、あ、雪花君もただいま」
「おかえりなさい」
とほほ笑んでくれる美穂さん。
「ねぇ、お母さん」
「んーなに?」
「今日、お兄さんにおうち泊まってもらおうよ」
「いい考えね、雪花君をおうちでおもてなししちゃいましょう」
「ええ!?」
「ダメかしら?」
「え、あ、絵里ちゃんと美穂さんがいいなら」
「私たちが、拒むはずないじゃない」
「そうだよ?私は雪花お兄さんがしてくれることならなんでも嬉しいんだから」
二人して当り前のようにそういうから、こっちがおかしいんじゃないかと思えてくる。
「じゃあ、泊ってもいいですか?」
「うん、大歓迎だよ」
「一緒に寝るの楽しみ」
ぼそっと、絵里ちゃんがなにかを言うが聞こえない。
それから、そわそわして落ち着かず、美保さんのお手伝いを無理して頼み一緒にして、途中で絵里ちゃんも一緒にしたりと楽しく料理をして食卓に並べる。
「「「いただきます」」」
三人で手を合わせて食べ始める。
「そういえば、雪花君のおうちってどこなの」
「あー、僕の家は.......」
「えぇ!?結構遠いじゃない。毎回大変でしょ?」
「雪花お兄さんごめんなさい」
「え?あぁ、大丈夫だよ」
二人が申し訳なさそうな顔をする。
「だって、二人と会話したりゲームしたりするの楽しいですから。全然苦じゃないですよ」
「雪花君」
「雪花お兄さん」
と二人が、じっと見つめてくる。
「雪花君の優しさ大好き」
「雪花お兄さんのそういうところすき」
二人とも、優しい顔で見つめてくる。
その瞳が真っ黒なのはきっと気のせいだろう。
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