第3話 改めて
「そういえば、絵里ちゃんの苗字とお母さんの名前まだ聞いてなかった」
「そうね。改めて、私は赤坂美穂」
「私は、赤坂絵里」
「「本当に、ありがとうございました」」
「いや、もう大丈夫ですって」
そんなに謝られるとこっちが悪いような気がしてくる。
「あのね、雪花お兄さん」
「.......。絵里ちゃん、一つ言ってもいい?」
「え?うん。何?」
「その、雪花お兄さんって何?」
「雪花お兄さんだよ?」
この子はまるで当然のように、何を言っているんだという瞳でこっちを見てくる。
「そっか、じゃあ今日から雪花お兄さんだ」
「うん,雪花お兄さんよろしくね」
「うん、それでこっちきてこっち」
そう言って、連れてこられたのは絵里ちゃんの部屋だった。
部屋に入り、周りを見ると可愛い人形の数々と数台のデスクトップPCそして、いろいろな機材が置かれていた。
「これ、何に使うのか聞いていい?」
「えーあー、そのー」
「あー聞いちゃダメだった?」
「雪花お兄さんだからいっか。私、配信者っていうやつなの」
「え、あ!そうだったんだ」
この子、さらっとすごいことを言った。
「でも、別に、そんなに売れてない無名だよ?まぁ、そんなことより一緒にゲームしよ?」
「あ、うん」
絵里ちゃんに促されるまま座る。
「.......あの、絵里ちゃん?」
「なに?」
「なんで、僕の膝の上に座るの?」
「?」
またしても、この子はどうしてそんなことを聞いてくるんだろうという顔でこっちを見てくる。
「ここは、私の席だよ?」
「僕の膝の上が?」
「うん。それより早くゲームをしよう」
そう言って、最近出た格闘ゲームを起動させる。
このゲームはなぁ.......あの女と一緒にやりたいという僕の純粋な心でやっていたから、意外と強い。
そう自負していたんだけれど.......
「やったぁ、私の勝ち」
「くそぉ、絵里ちゃん強いね」
「絵里、すごい?」
「うん、すごいよ」
「むふー」
と満足そうな顔をする。
可愛い。
「っと、ごめんトイレ行ってくるね?」
「.......私も行く」
「いや、ダメ、それはダメだから」
「.......分かった。でも早く帰ってきてね」
流石に、トイレまで行くのは自重したみたい。
部屋のドアを開けると、階段で美穂さんが手招きしていた。
「待ってたよ、雪花君」
「は、はぁ」
「少し、私とお話しましょう」
穏やかそうな美穂さんが真剣な顔をしているので自然とこちらもきちっとしてしまうが.......。
「その前にトイレ行ってもいいですか?」
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