第2話 出会い
後日、もう一度朝から、事情聴取され解放されたのは正午。
聞かされた話によるとあの家は、夫が死んでおりその妻と娘だけの女の人だけしかいない家だったらしく計画的に行われたらしい。
「はぁ....ほんと、春休みでよかった」
と言ってもあんまり良くはないんだけれど。
もう高校三年生だし。
「あ、あ、あの」
「ん?なに?」
と振り返るとそこにいたのはあの女の子だった。
「大丈夫だった?」
「だ、大丈夫でしたよ。お兄さんこそ大丈夫でした?痛かったですよね?」
「あぁ、これ?」
僕は、心配されないよう何でもないように手をぶんぶんと振る。
「こんな風にぶんぶん振っても問題ないから心配いらないよ」
「で、でも」
「おーい、絵里ー」
と僕の後ろから、おっとりした声が聞こえる。
「お母さん」
「絵里、家に帰りましょ.......あら?あなたはもしかして」
「お母さん、この人は私のことを助けてくれた恩人」
「!?本当にこの度はありがとうございました。あなたのおかげで大切な娘とあの家が無事です。本当にありがとうございます」
「あ、いえ、大丈夫ですよ。無事でよかったです」
この安心した笑顔を見れて良かった。
「.........」
「?どうしました?」
「い、いや。なんでもないです」
「.......お母さん?お兄さんの手を持ちすぎ」
「え、あぁ。そうね。それにしても、絵里がこんなに饒舌なのはいつぶりかしら」
「.......お母さん。うるさい」
一瞬、不穏な空気が流れたが、母娘の和やかな会話が流れほっこりする。
「あの、僕は、ここら辺で」
帰ったら何をしようかと歩きき初めてすぐに、服の袖が引かれていることに気づく。
「お兄さん.......おうちきて?」
「え、いや、あの.......」
「絵里もこういってますし、来ていただけませんか?」
「あ、は、はい」
「ふふっ、やった」
とほほ笑む絵里?ちゃん。
「じゃあ、いきましょー」
といつの間にかあれよあれよと車の中へ連れ込まれ出発していた。
「あの、お兄さんの名前ってなんていうの?」
「僕の名前は、
「雪花お兄さん」
「雪花君ね」
と彼女たちゆっくりと言葉を噛みしめ咀嚼して飲み込んだ。まるで自分の中にその存在を刻み込むように。
「それにしても、ひどいわ。雪花君ったら名前を言っていかないし警察の人に聞いても教えてくれないし。絵里がいなかったら、危うく逃げられちゃうところだったわ」
「逃げられちゃうって.......少しくらいかっこつけてください」
「かっこつけるって?」
「笑わないでくれますか?」
「笑わないわ」
本当にただ恰好をつけたかっただけ。
「名前を言わずに去るってなんだか仕事人みたいでかっこいいじゃないですか」
「ぷ、ふふっ」
「む、笑わないって言ったじゃないですかぁ」
「だって、あまりに雪花君が可愛かったんですもの」
「可愛いって」
可愛くないし。
それと.......
「絵里ちゃん?太ももをつねらないで。痛いんだけれど」
「.......知らない。お母さんなんてもっと知らないから」
ぷいっとそっぽを向いてしまう絵里ちゃん。
僕、なにかやってしまったんだろうか。
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