10-26 シェルフール帰還
次の日、シェルフールに向けて出発する。
道を舗装し直しながら馬車を走らせていく。
この遠征…、というかお出かけで皆の魔法の質もマナも増えたのだろう。
舗装もサクサクと進んでいく。
オグリンとナリタンもすこぶる上機嫌だ。
馬車の重さをもう少し軽くすればもっと楽になるのかな。
そうこうしているうちに、これまで舗装した箇所が終わる。
こりゃ、工事業者さんもびっくりだ。もう半分は済んだことになる。
あと半分の10㎞だが、皆マナが切れそうかな?と思うが、まだまだ元気だ。
凄い女性陣だよ。馬車を進め、半分まで行って休憩した。
「なぁ、みんなのマナが増えているような気がするんだけど…。」
「はい。私たちもそう感じております。これはまさしくカズ様と愛し合った結果であると…、」
「そんな事は無いと思うんですが…。」
「お館様、そんな事はありません。お館様と愛し合った翌日は身体が軽く、何でもできそうな気がしますから。」
「それは、違う意味でリフレッシュしたんだと思います…。
もし、そうであればアイナやミリー、ニコルがマナが増えていることが実証できませんよ…。」
「バレましたか。でも、皆寂しいんですよ。
カズ様、女心を分かってくださいね。」
「はい…、善処します…。」
休憩をはさみ、舗装を再開する。
先ほどのようなスピードはないが丁寧な仕上がりになっている。
これも土魔法の質が上がって来た証拠だ。
数キロ舗装したところで彼女たちを休ませる。
彼女たちを休ませた後、俺も進めていく。
残り7、8㎞くらい残ったかな…。ま、それでも上々だ。
「あとは、シェルフールに戻って休んでから、再開だ。皆、ありがとね。」
「では、シャルフールまで、がたがた道で進んでいきま~。
はいよ~、オグリン、ナリタン!」
馬車はゆっくりと進み始めた。
「社長~、シェルフールですよ~。」
「もう着いたのか?」
「はいな。皆踏ん張ってもらったからですね。」
4日ぶりのシェルフールだ。
店の奥に馬車をしまい、アイナは馬を返しに行ってもらう。
別館の工事も終わっているようだ。
本館の裏に着くと、レルネさんが出迎えてくれる。
「お、イチか。お帰りなのじゃ。」
「レルネさん、ただいま。変わった事は無かったですか?」
「おぉ!大有りじゃとも。」
「たくさんありそうですね。
では、家に入って聞きましょうかね。あ、ヤットさん、ラットさん、ただいま帰りましたよ。」
「社長!おかえりなさい。わしらも報告したい事が山ほどありますぜ。」
「それじゃ、みんなで報告会をしましょう。んじゃ、仕事のキリが良いところで終わってもらい、本館の事務室で話しましょうか。」
「いや…、多分ヒトが多すぎて入れんじゃろうから、2階の方が良いな。」
「あ、アデリンさんたちが到着したって事ですね。それじゃ2階のダイニングに…、そうですね、2時間後に皆で集まりましょうか。あ、汗を流したい人はお風呂に入ってくださいね。
それまでに夕食を作っておきますよ。」
「やった~!お館様の手作り料理です!トンカツです!是非トンカツを!」
ナズナはブレないね。
「皆、トンカツでいいかい?」
「はい((((はい))))。」
皆がそれぞれの部屋に入っていく。
別館の方も見たかったが、先ずは着替えをするため俺も部屋に入っていく。
部屋に近づくと、何か違和感を感じる…。
久しぶりだからか…、まぁ家にはバリアーが張ってあるから危害を加えるヒトは居ない…ハズ。
部屋のドアを開ける…、と、人影が素早く俺にぶつかって来た。
「ぐぇ!」
髪は金色?アデリンさんではない?
ん?この匂い…、どこかで嗅いだ匂い…。
「メリアドール…、さん?」
「カズさん、お久しぶりですね。お約束通り、王宮から戻ってまいりました。
早速、私を妻にしてください!」
「おかえりなさい。かな?
メリアさん、ここに着いてすぐに俺と結婚って、王宮はびっくりしますよ。」
「そうでしたね。私の第一の目的はカズさんの動向を監視する目的でしたね。
でも、会いたかったです。」
「俺もです。」
メリアさんを抱きしめ、長い口づけをする。
「カズさんからキスしてもらうのは初めてですね…。」
「あれから、いろんな事があったけど、身体の方は大丈夫ですか?」
「カズさんの“スーパーヒール”ですか?あの魔法は王都でも脅威の魔法だと認識されましたね。
王都の藪医者どもは、あのままいけば私の命はあと3か月持たなかったようですが、今では何も悪いところはなようで子供も産めますわ。でも、齢が齢なので少し体力に問題があるかもしれませんが…。」
「全快したって事だね。嬉しいことだ。」
「ふふ。これで、これまでの甘いお話を実践してもらえるという期待で一杯です。」
「甘い話?」
「いえ、こちらの話ですわ。」
「あ、忘れてたけど、メリアさんは何時こちらに着いたんですか?」
「昨日ですわ。クラリッセとサーシャとネーナも一緒です。」
「彼女たちは?」
「その事でお礼を言わせていただきます。
彼女たちにも個室を与えていただき、皆喜んでおります。」
「良かった。部屋は足りたんだね。」
「先を見据えて動かれる…。カズさんは凄いですね。
石鹸や髪を洗う石鹸…、“しゃんぷりん”というのですね、それらの特許などの報告はどうされますか?」
「それは大きな話になりそうかな?」
「とてつもなく大きな話になりますし、王宮からも少しばかり報奨金をふんだくって…、いえ、いただいてきました。」
「あらら。それじゃ、皆に知ってもらおうよ。情報は共有しておくのが一番だね。
それと、メリアさんの立ち位置は他のヒトには監視役ということで良いのかな?」
「ふふ。それは違いますよ。“押しかけ女房”という事で良いです。」
「そりゃ、みんなが引いちゃうよ。うん。妻で、でも王宮からは俺の監視役としてここに来ているから、妻という事を言っちゃいけないってしておこうか。
それと、雇用者、うーんとアデリンさんとかには雇用契約のTatooを入れてもらうって感じで。」
「Tatooですか? 何か恰好良いですね。 私もそれが欲しいです。」
「え?」
「確かディートリヒさん達も入れているんですよね。それも見せていただき、カズさんのファミリーであるというマークをTatooで入れるってのも良いですね。
そう言えば、冒険者としても活動されていますよね。そのパーティー名は何ですか?」
「“繚乱”って言うんだけど。」
「“繚乱”の意味は何ですか?」
「花が咲き乱れるって意味だけど…。」
「そうですか。では、花をイメージしたマークを考えましょう。
えと、紙とペンは机にありましたね。では、そうですね…。こんな感じではどうですか?」
メリアさんは、サラサラっとマークを描いていく。
バラやたくさんの花とツタが絡み合うマーク…、“繚乱”というイメージにぴったりだ。
「恰好良いですね。それに決めましょう!」
「カズさんに喜んでもらい、嬉しいですわ。」
「もう少しメリアさんと二人で話していたいけど、俺だけメリアさんを独占してはいけないね。」
「ふふ、カズさん。その逆ですよ。
私だけがカズさんを独占しているんですよ。
他の皆さんがやきもきする前に、皆に私たちを紹介してもらえると嬉しいですわ。
でも、その前に、もう一度抱きしめてください。」
メリアさんを抱きしめ、もう一度静かに、心から伝える。
「メリアさん、愛している。そしてお帰りなさい。これからはずっと一緒だよ。」
「ただいま、カズさん。ありがとうございます。
これから一緒に生きてくださいね。」
「あぁ、約束するよ。みんなで一緒に生きていこう。そして、笑顔いっぱいな日を送っていこう。」
おっさん、涙が出てきた…。
何故だろう…、ヒトと接していく事がこんなに幸せなことだなんて思わなかった。
ずっとずっと大切にしていきたい…。
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