10-5 店舗運営ですけど…
「冒険者に大銀貨1枚はキツイかもしれないけど…。」
「いえ、大丈夫ですね。流石にDランクは難しいかもしれませんが、Cランクの冒険者であれば、大銀貨1枚は1セットでも欲しいと思います。それに1セットあればクリーンで済ませますので。」
「そんなものかな…。んじゃ、Cランクのヒト知ってるから、一回使ってもらおうか。」
「問題ないと思います。その方にいくらなら買うかも聞いてもらえると嬉しいですね。
さすがに大銀貨1枚となると、市民は無理だと思いますから。」
「分かった。んじゃ、そういう価格帯で売り出すって事で。
トーレスさん、いろいろとご助言ありがとうございます。」
「いえいえ、いつもお世話になっておりますので。」
「あ、それとトーレスさんのお店で、腰に付けることのできるバッグってありますか?」
「いえ、そのようなモノは扱っておりませんね。」
「冒険者側の意見として、肩から掛けるバッグだと魔物を討伐する時に動いてバッグが邪魔になってしまうんです。それを腰の位置でカチッと止めることができるようなバッグだと邪魔にならないんですよね。」
「ふむ…。一理ありますね。それを冒険者に売ると…。」
「多分冒険者だけでなく、大工や猟師、いろんな用途に使えると思いますよ。」
「おぉ!それは良い。早速試作品を作って試してみます。」
「出来たら俺も買います。」
「流石ニノマエ様ですね。また当店の売り上げが上がっていきますよ。あどばいざりー契約でしたか。あれが凄く役立っています。またご助言をお願いしますね。」
「そうそうアイディアは浮かびませんが、何か気づいたら、また話しますね。」
俺たちはトーレスさんの店を後にする。
ディートリヒはメイド服のままだ。
皆ディートリヒを見ている。
「ディートリヒ、みんなに見られるってどんな感じ?」
「貴族になった気分ですね。すごく気持ちが良いです。」
「そりゃ、綺麗だからね。」
「カズ様、お世辞でも嬉しいです。」
「いや、お世辞じゃないから。」
「では、今晩は私という事で…。」
「あ、昨日の会議の結果を聞いていなかったけど…。」
「昨晩の会議では、決定権を持つメリアドール様がいらっしゃいませんでしたので保留となりました。
よって、その間まではカズ様がお決めになるということになりました。」
「へ?俺が?」
「はい。皆が満足できるようお願いしますね…。」
「善処します…。」
「兄貴、ここからどこを回るんだい?」
「うん。ブランさんが香りが良い石鹸が欲しいって言ってたから、レルネさんの店に行って、香る薬草を少し見せてもらおうかと思って。」
「ニノマエ様、それは嬉しいです。是非良い香りを教えてください。」
「んじゃ、昼ご飯食べてから行こうか。」
広場に行き、教会が管理している孤児院の子に4人分の入場料を払う。
そして、各店舗で売っているお好み焼きのアソートを2枚頼み、それをザックさんに渡す。
お、ちゃんと皿に山が出来てソースが混ざらないように区分けされているね。
「ここは、スタンピードで潰れた店が再開するまでテントで販売できるところね。
んで、これがここで販売している“お好み焼き”を食べ比べできる皿ね。
好きな味があれば、そこの店にこれを渡して。」
「これは何ですか?」
「チケットって言ってね。さっきの所でお金と交換できる紙だ。
これを渡せば“お好み焼き”を一枚くれるからね。」
俺とディートリヒはいつもの店に行ってチケットと交換し、ベンチに腰を下ろすと、ザックさんが走ってやって来る。
「兄貴、全部が上手くて…。どれを選んで良いか分かりません。」
「それじゃ、9店舗あるから、一枚ずつ食べてみると良いよ。」
「いや、それやると”へそ”からお好み焼きが出てきます。」
「だよね。んじゃ、今回は端の店から行って、次回来た時はその隣から食べるとかすると、この街に何回も来たくなるんじゃないかな。」
「兄貴、そりゃ良い考えだ。よし、んじゃ端から攻めていくか。」
「ザック様も楽しんでおられるみたいですね。」
「そうだね。みんなで楽しむと良いよね。
あ、そう言えば家の女性陣は何やってるんだろうね。」
「研究のない3人ですね。彼女たちにも何か仕事があるといいですね。」
「そうだね。でも俺の護衛とか言ってたね。」
「あの娘たちもカズ様と一緒にいれるだけで幸せですから、それで問題ありませんね。」
「そうか。俺としても嬉しいけどね。」
「まぁ、カズ様、それではナズナとベリルも今晩愛してくださるという事ですね。」
「いや…。3人はさすがにキツイです…。」
「そんな事言いながらも、昨晩は全員ですから。」
灰になってますが…。
お好み焼きのソースを口にべったり付けたザックさんが楽しそうにブランさんとお好み焼きを食べている。ここにルーシアさんとアリウムさんもいると良いのにね。
「なぁ、ディートリヒ。ひとつ良いか?」
「何でしょうか。」
「奥さんって、一緒に歩かないのかな…。」
「そう言えば、伯爵様もザックさんも歩いていないですね…。
奥様は奥様でお仕事やお付き合いがあるという事でしょうかね。」
「でも、そんなんじゃ夫婦になったって意味がないんじゃないかな。
夫婦になれば一緒に居られるって考えはないんだろうかね。」
「一緒に居られるという意味では私たちのような伴侶という立場が良いのでしょうね。」
「うーん。良く分からないな。
レルネさんもスピネルも伴侶だよね。でも研究などがあっていつも一緒に居られない…。
彼女たちはそれで良いのかな?」
「カズ様、愛し方と愛され方はヒトそれぞれです。
レルネ様やスピネル、そしてミリーもそうですが、彼女たちはカズ様の笑顔を見たいのだと思います。彼女たちが作ったものをカズ様が見て笑顔になる。これが幸せに感じるのではないかと…。
おそらくアイナもそうでしょうね。
ナズナはカズ様の依頼や斥候などの仕事に幸せを感じております。
しかし、私やベリルは何の取り柄もございませんので、こうやって護衛をしてカズ様を感じていたいというのが思いです。私とベリルは取り柄がないから、常にカズ様のお傍に居なければ捨てられてしまうと不安なのです。」
「ディートリヒ、俺は愛した女性をモノのように捨てたりはしないよ。それにいつも傍に居てくれて感謝しているんだ。ベリルにも感謝しているけど、とりわけディートリヒは俺がこの世界に来て最初に愛した女性だ。それに一番安心できるんだ。」
「カズ様…。今宵は離しませんから。存分に愛してくださいね。」
「はぃ…、善処します…。」
ザックさんは本場の“お好み焼き”に満足したようで、帰る時はアイテムボックスにたっぷり買って、みんなに配るようだ。
そんな話をしながら、レルネさんの店に着いた。
「邪魔するでぇ~」
「邪魔するだけなら帰ってんかぁ~」
「ほな、さいなら。ってちゃうわ。」
「あははは。ニノマエ様ですね~。こういった掛け合いは楽しいですね。」
「兄貴、これは店に入る前の合言葉ですかい?」
ザックさんは不安になっているが、これは挨拶の一種だと教えると納得してた。
既にブランさんはルカさんに香りの薬草についていろいろと聞いている。
ルカさんも専門的な話なので真剣だ。
暇なのは俺とディートリヒとザックさん…。
店に所狭しと並べてある雑多なモノを見ていく。
ホント、いろんなモノを売ってるんだな…。
捜索しはじめ、棚にある組紐に目が行った。
鑑定してみると、“守護の組紐”と出た。
もうちょっと詳しく鑑定すべく手に取ってみると、
守護の組紐:防御力+1、経年劣化防止、致命傷を受けた場合、1回限りこの紐が切れることで自身が守られる。
ちょと待て、何でこんな貴重な紐が売ってるんだ?
また“迷い人”だよ…。経年劣化とある事自体おかしなもんだ。
でもミサンガとかじゃないのか?
もしかして、ミサンガを説明できなくて組紐になってしまったとか…。
もっと探せば掘り出し物もあるかもしれないが、“迷い人”に突っ込みを入れるのは先のことにして、その組紐も20本買っておいた。
ルカさんもいくらか分からないのか、適当に銀貨1枚だよって。
得した!レルネさんには内緒にしておこう…。
香りの選択も終えたようで、ブランさんも満足している。
どうやらサンプルをもらったようで、個別の袋に入った薬草を大切に持っている。
うん。可愛いね。人妻だけど。
家に戻ると、店の前にアイナが踏ん反りかえっている。
「アイナ、どうした?踏ん反りかえって。」
「社長~!待ってましたよ。踏ん反り返っているのではなく、胸をはっているんです!」
ちっぱいが胸をはったところで、何も変わらないんだが…。
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