10-4 店舗運営

「そうすると、ニノマエ様のお店では石鹸と“しゃんぷりん”を販売されながら、下着を展開されると。」

「それに合わせて、アクセサリーと衣装も売るよ。」

「衣装と言われると?」

「うーんと、イメージとしてはメイドさんたちがカッコよく、そして可愛くなる服だ。」

「それを是非見てみたいです。」

「ディートリヒ、アデリンさんのところで買った服って、今持ってる?」

「はいカズ様、いつでも着ることができるよう常備しております。」


 常備って…。それにトーレスさん、シャンプーとリンスが何故に“しゃんぷりん”と名前に変換されているんだ?


「トーレスさん、着替える部屋を貸してもらっていいか?」

「では、奥の部屋を準備いたします。うちの秘書に案内させましょう。」


 お、すごい有能な女性秘書が出てきた。

眼鏡かけると凄くデキル女性に変身するようなヒトだ…。


 二人は奥に行った。

しばらくの間、ザックさんを交えてこれからの販売について話をしていると、秘書さんが駆け込んできた。


「ニノマエ様、あ、あの…、ディートリヒ様が着用されておられる下着は何でしょうか?」

「あ、あれ?あれをこれから売り出すんだよ。」

「売り出す前に、是非私たちに売ってもらえませんでしょうか。」

「ニノマエ様、そんなに素晴らしいものなんですか?」

「うーん…。俺達、男には分からないんだけど、着心地は断然良いし、それに胸のラインが綺麗に見えるから、女性は美しく見えるんだよね。」

「あ、あの“しょーつ”というものも素晴らしいです。」

「ピッタリしているからね。」


「カズ様、よろしいでしょうか。」

「お!やっぱり可愛いね。」


 メイド服、ゴスロリ風。

うん、これも正義だ!


「ニノマエ様、こういった服があるんですね。」

「あぁ。俺の店の店員さんに来てもらおうと思っているよ。」

「ニノマエ様、これは…、売れますね。それと遊郭にも10着ほど欲しいです。」


 そんなプレイがあるのか?

それとも、給仕の女の子にか? うん。是非行ってみたい。


「カズ様、遊郭に遊びに行くのはダメですからね。」


まずい、心を読まれた…。


「視察ならいいか?」

「まぁ、視察だけなら…。」


 よし、言質取った。


「レイケシア、女性から見てどうだ?」


 あ、この秘書さんレイケシアさんって言うんだ。


「はい。機能的でかつ動きやすそうですね。それにこのヒラヒラがとても可愛いです。」


 ビジネススーツが似合うレイケシアさんもレースに釘付けか。


「それと、メイドさん…、侍女さんが着るってのも良いと思いますね。

 もし、俺が館持ちになったら、これを着てもらおうと思っているからね。」

「侍女にですか…。」

「うん。下着も渡して可愛いメイド服を着てもらって家の仕事をしてもらうってのが俺の夢なんだよね。」

「ニノマエ様、お願いがございます!」


 レイケシアさんがいきなり、俺の前に着て頭を下げてるが?


「是非、私めを雇っていただきたいのですが、いけませんでしょうか?」

「へ((へ?))?」


 男性陣全員が呆けた…。

ディートリヒだけがウンウンと頷いているが、何故だ?


「私、秘書業務もできますし、経理もできます!店の売上管理と販売、企画も出来ます!

 是非、私を雇っていただけませんでしょうか!お願いいたします!」


 なんか強く懇願されているけど…。


「えと…、レイケシアさん…。

 もしかして、この服気に入っちゃった?」

「はい!このような可愛い服を毎日着ていられるなんて…。

 なんて素晴らしいお店なんでしょう!

 これこそ、私が求めていた服です!」

「この服って、下着をチラ見せすることにもなるんだけど…。」

「願ったり叶ったりです!下着の美しさを魅せながら、服の可愛さを前面に出す。

 こんな素晴らしいお店がこの街に出来るんですよ。

そんな夢のある所で働けないなんて残酷です。」


 なんか、凄い事になってしまった…。

トーレスさんも困り果てている…。

俺的には良いんだけど、でもレイケシアさんはスーツスタイルの方が俺は好きなんだけど…。

ギャップ萌えという奴なのか?


「トーレスさん、すみません。」

「ニノマエ様、全然かまいませんよ。

 確かに彼女を抜かれるのは当店も痛いですが、彼女の望みと夢のようですからね。

 彼女の夢を応援してあげるのが店主の務めですよ。」

「すみません…。では、次回の念珠の金額はトーレスさんの言い値の半額で取引させていただくという事でどうですか?」

「え!そんなにですか!ありがとうございます。では、店員を全員移籍させておくという事で。」

「いや、そんなに要りませんし、家の店は狭いですから…。」


 何故か有能な店員さんをヘッドハンティングすることに成功してしまった。

移籍金は念珠半額。いったいどれくらい持ってこればいいんだろう…。


「で、トーレスさん、念珠はどれくらい必要ですか?」

「そうですね。100個ほどお願いできますか?」

「100個?」


 白金貨4枚…、4億円を見込んでいるってか…。

その半額を元値としても2億の儲けか…。

流石トーレスさんだね。んじゃ、少し恩を売っておこう。


「それじゃ200個持って来ます。売値が金貨2枚の半額で金貨1枚。これでどうですか?」

「へ?それで良いんですか?」

「ただ、200個となると大きさも種類もまちまちになりますので、それはご了承ください。」

「種類があった方が、私どもも助かります。では、単価金貨1枚で200個。これでお願いします。」

 

「あ、兄貴…、その何というか…。

 兄貴って、一体何者なんだ?」

「ん?俺は“渡り人”だけど。」

「いや、そうじゃなく、白金貨数枚の元値がトーレスさんの店の売上では白金貨数百枚になるんだよ。」

「そうだけど。」

「白金貨数百枚だぞ…。」

「別にすべて売れるとは限らないよ。それに売れ残ることも見越していると思うし、せいぜい白金貨300枚いけばいいんじゃない?」

「兄貴…、すまん。俺っち頭痛が痛くなってきた…。」


 いや、頭痛はすでに痛くなっている状態だからね…。


「多分、下着や石鹸を売り出すと、もっとびっくりすると思うからね。

ブランさんは商売に詳しいから分かっていると思うし、ルーシアさんもアリウムさんも、売れる見込みを立てているんじゃないかな。」

「へ?そうなのか?ブラン?」

「はい。おおよその見込みは既に持っていますわ。

石鹸を銅貨5枚で月500個販売、しゃんぷりんを銀貨2枚で月500個、下着は最初は貴族用に金貨1枚で10セットは売りますと、人件費や諸々を差し引いても金貨4枚以上の売上になりますね。

 さらに、今後下着を銀貨5枚にして100セット売ったとしても、金貨2枚以上の売上になります。

月200セット下着を作るとなると、一日7~8セット作れば良いので、工場で働く方も週1回休めることとなります。」

「それに、ショーツだけ売っても良いしね。んとショーツだけだと銀貨2枚くらいかな。」

「ニノマエ様、その値段であれば皆買うでしょうから、ショーツも作る縫子さんも追加で雇うことといたしましょう。」

「そうか。月にして金貨3~4枚の売上か。まぁ打倒な所だね。」


「あの、ニノマエ様、手前どもから少しご提案をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」

「ん?トーレスさん。何?」

「金貨1枚から銀貨5枚となると大幅に売り上げが落ちます。

 おそらく、統一的な下着をお作りになり市民に販売なさると思います。

 ただ、貴族や私どものような妻は、社交界というところで見せる必要があります。

 そこで、貴族にお売りになられる金貨1枚は流石に高いですが、妻専用の下着という特別なものを作っていただくことはできませんか。」

「あ、オーダーメイドね。うん、できると思うね。

 んじゃ、廉価版は白一色として販売。さらに付加価値を付けながら黒や模様は少し高くしようか。

それと貴族に販売したように一人一人サイズを測り、生地も選んでもらい作っていくって言うのも取り入れてみる?

 そうすると、ブランさんどれくらいの売上になるかな。」

「面白い販売方法ですね。

そうですね、ショーツのみを銀貨2枚で100枚、黒を銀貨4枚30セット、模様を銀貨5枚30セットとしましょうか。それと“おうだめいど”を月10着限定とし、大銀貨5枚としましても金貨5枚ですね。」

「ブランディーヌ様、大銀貨5枚では安すぎます。大銀貨20枚でも我々は買いますね。

 それくらい素晴らしいモノだと思いますが、どうですかレイケシア?」

「ディートリヒ様が着用されておられるのが“おうだめいど”だとすれば、大銀貨20枚以上はしますし、そのヒトの身体に合った下着で色も模様も唯一のモノであれば金貨1枚でもいけるかと思います。」

「しかし、そうしてしまうと一般の女性にも浸透しないんだよね。

俺は、どちらかといえばこの国にいるすべての女性が下着をつけてくれて笑顔になってくれればいいなって思っているだけだからね。

 あ、そう言えば、言い忘れていたけど、スポーツブラセットというのもあるから。」

「“すぽおつぶら”ですか?」

「持ってたっけ?えと…、あ、これだ。一応これね、冒険者用に良いかと思って。」


「ニノマエ様、これも作りましょう!」


 あれ?ブランさんがいやに熱狂的だ。


「これを大銀貨1枚、月20セット売りましょう!」


 どんどん、販売する品が増えてきた…。

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