6-12 残念娘、再臨!

 家に鍵をかけて、近所に一日留守にしますと伝えると、快く返事をしてくれた。


 先ずはマルゴーさんの店に行き、彼女たちの武具をそろえる。

どれくらいのレベルなのか不明だし、俺たちと動くとなれば相当のモノになるんだが、そうすると高くなってしまう…。それだと彼女たちは恐縮するだろうな…。


「ディートリヒ、ナズナ、彼女たちにはどんな武具が良いかね。」

「はい、カズ様。ベリルさんは近接の盾役が良いので、盾、武器、防具ですが、豆腐装備よりは少し強いものにしておいた方が良いかと思います。」

「じゃ、鋼装備でとりあえずはいいかな。」

「それで良いかと。」

「お館様、スピネルさんは中衛という事ですので、コンパウンド・ボウかスリングですが、ダガーも装備しておくと安心でしょう。防具は動きやすい革で良いかと。」

「うん。それじゃその方向で。」


「ニノマエさん、まだお嬢さんがたの防具がまだだけど良いのか?」

「あ、マルゴーさん、大丈夫ですよ。彼女たちも冒険者登録したてのヒトだから、その監督という所でそんな奥には進みませんから。」

「なら良いが。防具はもう少し待っててくれ。すっげーもん作ってやるから。」

「大丈夫ですよ。気長に待ってます。」


 ディートリヒとナズナが彼女たちの武具を決めたようだ。

ベリルさんはラウンドシールドにバトルアックス、防具は…ビキニアーマー?


「なぁ、ディーさん…。この装備、お腹寒くないかい?」

「であれば、中に一枚インナーを入れれば良いと思います。」

「いや、盾役だろ?結構叩かれるんじゃないのか?」

「それを盾でいなすんです。」

「そうか…、ま、ベリルさんが良いと言えばいいよ。」


俺的に言えば全然OKです。はい。好みの装備です。

しかし、お腹が冷えることと盾で避けられなかったら痛いだろうな…と思う。


スピネルは冒険者の革の服にコンパウンド・ボウ、ダガー装備だ。

ま、軽装だからナズナのような立ち位置になるんだな…。


「ナズナ、ひとつ質問があるんだが…。」

「お館様、何でしょうか。」

「弓って矢が必要だよな。その矢はどうするんだ。」

「基本、撃って拾ってまた撃っての繰り返しです。」

「そうだよな…。矢は有限だもんな。ただ、スピネルさんはマナが多いような気がするんだが…。」


「は、はい…。竜人族としてはマナが多いと言われてました。」


 そうか…。じゃ、弓よりも砲台の方がしっくりくるかもしれない。

ただ、今までは二人でしか戦闘していないので、それが出来なかったという事か…。


「それじゃ、マルゴーさん。2人にこの装備を、それと一本このワンドも追加で。」

「はいよ。んじゃ、大銀貨80枚になるけど、ニノマエさんとの付き合いだし、酒の事もあるからな。

 大銀貨60枚でいいよ。」

「ありがとう。んじゃこれ代金ね。」

「まいど。」


 武具に着替えた二人は少しおっかなびっくりしている。


「あの、ニノマエ様…」

「ん?どうしたベリルさん?」

「私たち、このような高価な装備は…、その…、お金もないのに…、」

「あ、これは先行投資と言ってね。この代金も含めてお金が出来たら支払ってもらうって事になるよ。

もちろんイヤなら仕方無いけど、ダンジョンではいつでも死と隣り合わせだからね。これくらいの装備をしておかないと、すぐに死んでしまうよ。」

「は、はい…。」


「あの、私からも良いでしょうか…。」

「はい。スピネルさん。」

「皆さんがお持ちの装備ですが、なにか凄い付加が付いているようですが…。」

「あぁ。自分たちはこれでもCクラスだから。」

「え…。Cクラス…ですか。だから付加が付いた装備をしていらっしゃると…。」

「そうではなく、自分も鑑定持っているからね。掘り出し物を探し当てたってところだよ。」


 冒険者ギルドに到着した。

さて、この二人を冒険者登録してすぐに立ち去ろうとしたが、やはりシーラさんに見つかってしまった。


 「ニノマエ様、何ですか、その女性は!それに2人も!

  私というものがありながら、新しい女性、それも2人も!」

 「あ、違うんだよ。彼女たちは冒険者になりたいって相談を受けたから、その…、自分たちが助言してあげようとしているだけだ。」

「でも、パーティー登録するんですよね。」

「まぁ、そうなるけど。」

「そうしますと、彼女たちはCランクのメンバーの一員となってしまい、レベル的にも合わなくなります。そうですね…。先ず彼女たちでパーティー登録して、そのサポートをニノマエ様のパーティが行うという事でお願いします。」

「う、うん。それじゃ、そういう事で。」

「あ、それと、ニノマエ様、そろそろパーティー名を決めていただかなければ、依頼も滞ってしまいますので、ここで決めてください。」

「え、今、ここで?」

「はい。こ・こ・で!」


 ノーアイディアだ…。

俺はディートリヒとナズナを見る。

仕方ないですね、と言わんばかりにディートリヒが提案する。


「では、“カズ様と素敵な仲間”では。」

「却下です…。」

「“カズ様とハーレム”…」

「嫌です。」

「“かみなりおやぢ”?」

「ナズナさん、喧嘩売ってます?」

「“Late Bloomer”」

「二つ名はやめてください…。」


 完全にいじられ始めた。

遅咲きか…、花が咲く、開花、繚乱、爛漫…。


「じゃぁ、“繚乱”でお願いします…。」

「はい。では“繚乱”で登録しますね。それでニノマエ様、“繚乱”とはどんな意味でしょうか。」

「華が咲き乱れるって意味です。満開だってことですね。」


「ま、満開…。」

「さ、咲き乱れる…。」


 あ、いかん…。ディーさん、ナズナさん、違う意味でクネクネし始めた…。


「そうですか。では、パーティー名を“繚乱”で登録しておきます。

 指名依頼もあると思いますので、少なくとも一週間に一回はギルドに顔を出してくださいね。」

「はい…。でもなかなかギルドに来れない場合もありますので、そこは許してください。」

「そう言われる方もお見えになられますので、Bクラス以上のパーティーにはギルドから専属の職員がサポートすることになっております。

 ニノマエ様の“繚乱”の専属職員は、私、シーラが担当させていただきます!」


 ん?専属職員?サポート?なんだ?


「ごめん…、専属職員って?」

「冒険者のサポートを専属で行う職員です。あ、因みに専属と言ってもそれだけを行う訳ではございません。あくまでもサポートに協力させていただくという事だけですので。

 ただし、私シーラは違います。

ニノマエ様が満足される冒険者ライフを保証させていただきますので、どうぞ、末永くよろしくお願いいたします。」


 シーラさんが赤面しながら、ふんすかしているのは何故だ?

それに、俺、いつの間にBランクになった?


「すまんが、自分たちはCランクのはずだが…。」

「いえ、先般の遠征でBランクに昇格されております。」

「は?あれは俺たちが依頼したもんだろ?」

「しかし、大きなサーペントを倒されました。あのポイントが昇格の基準を越えたという事です。」

「もしかして、あのデカい蛇のこと、報告した?」

「はい。それはもうたくさん!」

「髪留め返せ!」

「あれは、ニノマエ様からの婚約の証としていただいております。」

「あれは、口封じのための約束だったよな。」

「え、そんな事聞いておりません。それに色街も行かれましたし、私を放置して…ブツブツ。」

「あー、もういい!

 隙にしてくれ。BでもCでもどうでもいい。ディートリヒ、ナズナ、行こう。

 ここに居ると頭が痛くなる。」

「それでしたら、私が愛用しているお薬を…。」

「…。ダンジョン行ってきます…。」

「お早いお帰りを~。待ってますわ~。」


 相変わらず残念娘だよ。

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