5-14 盗賊と色街

 うん、流石冒険者さんです。


手際が良いです。

生きている2人を捕縛し、アジトを聞き出している。

聞けば、盗賊を討伐した者、アジトを潰した者はその者の手柄だそうだ。

ただ、盗賊と言っても名だたる盗賊もいるようで、なかなか倒せるものでもない。

今回は総勢15名の弱い盗賊だったという事で、何事もなく終わった。


 ただ、死体を処理するのが辛い…。

 穴を掘り、焼き、埋める。それだけの作業だが、やはりヒトを殺すという事が初めての俺は戸惑う。

首を無表情で切っていくヤハネのメンバーを見ていただけでキラキラが出た。


「ニノマエさんはゴブリンの時もそうだったよね。」


 にっこり笑いながら首を切っているエミネさん…、虫が嫌いって嘘じゃないのか?と思うよ。

俺って、つくづく弱いし、脆いよね。

そろそろ、耐性がつかないかな…などと思うけど、こればかりは無理だわ…。


 ようやく首を切り終え、バーンさんが俺が渡したバッグにひょいひょいと首を入れていく。

うわ、俺的に言えばサイコパスだよ…。


 死体もナズナの土魔法で穴を掘り、そしてベアさんの火で焼き、焼ききれない部分を俺のデカいター〇ジェットで炭化させ埋め戻す。勿論キラキラも一緒に…。

 死んだ馬さんもごめんなさい。罪はないけど一緒に焼きました。


 残った馬と盗賊2人を連れ、彼らのアジトに行き強奪?

結果、武具が少しと塩が一樽、金貨が1枚…。

みな切羽詰まった状態だったんだろうな…。と思うが、レルネさんが『塩は当たりだ』という事で、エミネ母さんはホクホクしていた。


 その後、数刻して小さな町があり、そこで盗賊討伐の報告と報酬をもらうための手続きがあるとの事で、今日はここで宿泊することとなった。

 俺たちは宿屋で部屋をとり休憩する。

護衛の皆もこういうときの必要経費は依頼主が出すとの事で俺が出しておく。

シーラさんはギルドの必要経費で落ちるだろうと思っていたが、そこはドライであり、1日の日当の中で対応せよとの事だった。シーラさん泣きそうになっていたので、仕方なく出したら、泣いて喜んでいた。


「夜は私の部屋の鍵はかけておきませんので…。」


 と小声で言われたが、そんな事はいたしません。

鍵をかけて寝てくださいね。とだけ言ってそれぞれの部屋に入った。


 夕食もそれぞれで取ることとしたので、半日ぶりに3人になれた。


「なんか、忙しい1日だったね。疲れてないかい?」

「はい(はい)。」


 二人とも目を輝かせている。

そこは疲れてますと答えてほしいよ…。


「馬車ではレルネさんの我儘に付き合ってくれてありがとね。それじゃ、夕ご飯食べに行こうか?」


 俺は2人を誘うが、彼女たちは動かない。


「ん?どうした?」

「カズ様、先ずは私どもに馬車の中が修羅場にならなかったことをお褒めいただくことが必要かと。」


あ、そういう事か。彼女たちも我慢してたんだもんな。

俺はディートリヒからキスし抱きしめる。


「ディートリヒ、今日はありがとね。」

「むふぅ…、カズ様、幸せです。」


 次にナズナにキスし抱きしめる。


「ナズナ、今日はありがとね。」

「はい。甘美です。」


最後に二人を一緒に抱きしめる。


「はぁ…、カズ様の匂いです…。」

「これが1日のご褒美なのです…。」


 まぁ良いか。

でも、そろそろヤバいんですが…。こんな事をしているとマイ・ジュニアが目覚めるよ…。


 半刻ほどゆっくりした後、食事に行くことにした。

 小さな町なので食事処も数件しかない。

街のヒトに聞き、美味しいお店を紹介しもらいその店に向かった。


 お!ここにもソースがある!

流石ユーリ様、もう違う町にもレシピが行っているんだ。


 鶏肉のようなお肉と野菜スープを頼み、皆で味を堪能する。

この店のソースは薄味だが、しっかりとパンチがある。食材を活かしているね。

などと専門家のような事を冗談まじりに言いながら和気あいあいと食事をとった。


もう外は暗くなっており、あとは宿屋に戻って寝るだけだ。


「そう言えば、カズ様はご存じでしたか?」

「ん?何が?」

「宿屋は壁が薄いので、愛し合う時の声が外に漏れることが往々にしてあります。

 そういう時は連れ込み宿に行き、そこで愛し合った後で宿屋に戻るという事もあります。」

「へぇ、そうなんだ。」


 ラブホ的なものだな。どの世界にもあるんだな。


「で、カズ様、一度行ってみませんか?勿論3人で!」


 あ、そこに落ち着くのね…。

もしかして2時間休憩とか、宿泊とか、ノータイムとかもあるのかな?なんて思いながら、ネタにもなるから一度くらいは覗いてみようかなと思う。


「二人が良ければだけど、お手柔らかにしてくれるなら一度見てこようか?」

「はい(はい)!」


 即答って…。


 俺たちは3人でそれらしき通りを歩く。

昔で言う“色街”。

遊郭もあり、待合もある。その一角に宿もある。

これまでの世界でも、過去にそんな街があったことを聞いたことがあるし、俺が生まれ育ったところも日本三大ソープランドの一つがある。

小さい頃、そこを一人で歩き、声をかけられなかったら負けという肝試し的な遊びもしていた。

でも、絶対声かけられるんだよ。『おい坊主、あと10年したらこの街に来いや。』とかね。


 ノスタルジーに浸りながら、通りを歩いていると見かけた顔があった…。

あ、バーンさんとエミネ母さんだ。


 ナズナが声を出そうとしたので、口を押さえ少し隠れる。

俺は口に指を当て「声出しちゃいけない」ポーズをすると、ナズナも分かってくれてコクコクと首を振ってくれた。

こういったところで声をかけるのはご法度だって聞いたことがあるんだよな。

誰に聞いたんだっけ?あ、そうそう職場の先輩だ。

昔はそういう話とかいっぱいできて面白かったな。


 なんて思っていると、次はベアさんに引っ張られたブライオンさんが違う店に入っていったよ。


「うん。青春だね。」

「カズ様、青春とは何ですか?」

「うん…、上手くは説明できないんだけど、付き合っている2組のカップルがお互いの眼を気にしながら付き合っていることを隠しながら生活したり、好きだってことを共有しあったり、自分の好きという気持ちが押さえきれなくなったり、相手の気持ちにやきもきしたりすることかな。」

「お館様、私たち3人は青春なんですね。」

「そうだね。ま、傍から見れば保護者って言われるかもしれないけどね。」


 そんなこんなを言いながら、俺たちも少し高そうなところに入る。


そこに入るとびっくらこいた。

なんとこれまでの世界と同じように入り口に部屋の写真が飾ってあり、気に入った部屋を押すと鍵が出てくるといったシステムだった。

どうやら前金制でお金を払えば3時間は部屋を貸してくれる。

その後の延長をどうするかは分からないけど、このシステムの原型を作ったのは、絶対あの“迷い人”だと確信した。


 部屋に入ると、お!お風呂がある!

貴族にしか無いと言われたお風呂が部屋にある。それも魔石でお湯がでるシステムだ。

このシステム絶対欲しい!

 

「カズ様、いかがしましたか?」

「ディートリヒ、この設備を見てくれ。これマナを流すとお湯が出る装置だ!

 このシステムを俺達の家に導入したい!」

「では、後ほど、ここの責任者にかけあってどこで製作しているのか聞いてまいりましょう。」

「いや、ちょっと待て。後でって愛し合った後でか?」

「はい。そうですが…。」

 

 あちゃー…。


「うん…。ディートリヒ、ここはレルネさんの郷の帰りに寄った時に聞くことにしないか。」

「それでも構いませんが…。今ではいけないのですか?」

「うん。そうやって真正面から言われると恥ずかしいんだが…。

ディートリヒもナズナも、俺と愛し合った後の姿を誰にも見せたくないんだよね。」

「カズ様(お館様)」


 はい。すみません。

二人のやる気スイッチを押してしまいました。

多分、俺…、明日は馬車の中で爆睡しているんだろうな…。

そこからゆっくりと愛し合った後、お風呂に入り髪の毛を洗ってあげて宿屋に戻りました…。


 宿屋に着くと入り口でワナワナ震えているシーラさんを発見…。


うん。見なかったことにしよう…。

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