好きな人

私は2年生へとなった。

相変わらず、先生はモテモテで、何人の女の子を泣かせたのだろう。

先生はいまだに独身。

彼女の噂1つもない。


「先生ー。なんで、彼女作らないんですかー?」


いつも通りの昼休み。

私は職員室に来てまで、先生とおしゃべりをするのが日課だ。


「まあ、好きな人がいるからな」


そう言った先生の耳はほんのり赤くなっていたかのように思う。

そして、私は納得してしまった。

どんなに可愛い子が告白しようが、どんなに美人な子が告白しようが、「はい」という2文字を口にすることはなかった理由。


その好きな人ってどんな人?

可愛い? 美人? かっこいい?

まだ私の知らない先生がいる......。


「へー。先生の好きな人気になるー」


私はできるだけ、笑顔で明るい声で言った。

泣いてしまはないように。


「頑張り屋さんで、いつもにこやか笑顔でいる人だよ」


先生は少し照れたように話す。

そんな先生を見てると、胸の奥が苦しくなった。


あー。私が入る隙間もないし、本当に先生は好きな人のことが好きなんだなー。


私はこの気持ちを硬い扉の奥へと、鍵をかけた。


「告白しないのー?」


私は悟られないように、茶化す。


「まだできないかな」


そう言った先生は少し寂しそう。


「愛川さんはいないんですか? 好きな人」


さっき鍵をかけたばかりだというのに......。

ここで、先生って言えたら、どんなに楽なんだろう。


「いますよ。けど、絶賛片想い中です。相手に好きな人がいるんですよ」


私は少しイタズラっぽく言った。

もしかしたら、自分かも? って思ってもらいたくて。


「一応、ちゃんと青春してるんだねー。先生は一安心ですよ」


そう言って、私の頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。

私の気持ちも知らないで。

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