第34話 決意表明
「私、ゴーシュラン王国に戻ろうと思うのです」
私が帰るなりそう宣言すると、三人はきょとんとしていた。
「リディア、急にどうしたんだい? いや、それより呪いは返せたのかい?」
よく分からないといった表情で、クラウスが口を開いてた。
「はい! 無事終わりました。それで、この後どうしたいか考えたのです。一度王国に戻って、直接王族の皆さんから話を聞きたいなと思いまして」
「それは何よりだけど……大丈夫かい? 特に第一王子は危険な奴だ。次会ったら何をされるか分からないだろう? それをこちらから会いに行くなんて……」
三人とも呪いが完全に解けたことに関してはホッとしたようだったが、私の言動には心配そうな顔をしていた。クラウスの言う通り、ルーファス様がどう出るか分からない以上、当然の反応だろう。
確かにルーファス様が何を考えているのか全く分からないが、妖精の力があれば無理矢理閉じ込められる心配も少ないはずだ。
「いざとなったら妖精の力で何とかします。ルーファス様にもシャーロット様にも逃れられない証拠があります。シャーロット様へ呪いを返したので、彼女の瞳の色に変化が出ているはずです。ルーファス様の地下部屋も動かぬ証拠となります。真実を話していただくには、今行くのが良いかと」
シャーロット様の日記帳もすぐには処分されないはずだ。証拠がそろっていれば、国王に訴えることも出来る。そうすれば冤罪も晴れるだろう。
「……それなら止める理由はないな。リディア、僕もついて行って良いかい? 君ほどの力があれば必要ないかもしれないけれど、いざという時、力になるよ」
「ありがとうございます。クラウスがいると心強いです。ただ、問題はどうやって王族に謁見するかです。姿を変えているとはいえ、私は罪人ですし……」
そう。一番の問題は、王族に接近出来ないということだった。見た目が違う今、入国自体は問題なくできるだろうが、一般市民は特殊な事情がない限り王族に会うことは出来ない。まして、王子、王女、国王の三人ともに会うのはかなり困難だろう。
「そういうことなら協力しよう。確かにクラウスとリディアだけでは王族に謁見するのは難しいだろうね。君たちにはスカイテルーシ帝国の国使として行ってもらおう。向こうも邪険に出来まい」
話を聞いていたヘルマンさんが、穏やかな笑みを浮かべて提案をしてくれた。
「そんなこと可能なのですか?」
「もちろんだとも。私の代理ということにすれば良い。皇帝には話を通しておく。まあすぐに許可されるだろう」
こんな私情を国交に持ち込んで良いのか疑問だが、他に良い方法を思いつかなかったので、お願いすることにした。
ヘルマンさんは、一週間も経たないうちに皇帝からの許可を貰って来た。一体、どんな交渉をしたのだろうか……。とにかく、私とクラウスはスカイテルーシ帝国の国使としてゴーシュラン王国に向かうこととなった。
「いいかい、今から君たちは帝国の代表だからね。この手紙を国王に渡すまでは、大人しくしているんだよ。これを渡した後は、好きにして構わないからね」
出発の当日、ヘルマンさんから帝国の紋章が入った手紙を渡された。何が書いてあるかは分からないが、重要な手紙なのだろう。
「分かりました。粗相のないように気をつけます……」
「ははは、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。悪いようにはならないはずだから。クラウスには内容を少し話してあるが、リディアはやりたいようにすれば良い。クリスティーナと二人で帰りを待っているからね」
「そうよリディアちゃん、好きなだけ暴れて来ていいからね。二人が笑顔で帰ってくるのを待っているわ」
ヘルマンさんとクリスティーナさんに見送られて、私たちはゴーシュラン王国へと向かった。
「さあリディア、行こうか。君を苦しめた奴を地獄に落としてやろう」
クラウスは、茶目っ気たっぷりに私に告げた。
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