第33話 やりたいことは

「そうだよー! 元気出してほしかったの」

「リディアのこと好きだもん!」


「あ、ありがとうございます。……私もお二人のこと、大好きですよ」


 なぜこんなにも好意を向けてくれるのかは分からないが、まっすぐに気持ちを伝えてくれる二人からは嘘は感じられなかった。二人の純粋な優しさに、心から感謝した。本当に良い妖精に出会えたのだ。エルナンデス家の皆と同じくらい大好きだと思えた。





 それから、二人と一緒に空を飛んで追いかけっこをしたり、かくれんぼをして遊んだ。遊んでいる最中に、二人が再び妖精にならないかと誘ってきた。


「ねえ、リディア本当に妖精にならないの? 人間楽しい?」

「もう力もあるし、妖精みたいじゃん! 人間なんてやめよーよ」


 確かにこの力は人間離れしている。そもそもどこから人間で、どこからが妖精なのだろうか……。自分の立ち位置が中途半端なせいで、境界線が曖昧に感じた。

 妖精になったら何か変わるのだろうか? 少し気になってしまう。


「興味はあるのですが、まだやりたいこともありますし」


「やりたいことって?」

「楽しいこと?」


 二人に聞かれると分からなくなる。私のやりたいことって何かしら?エルナンデス家の皆と暮らしたいという気持ちはあるけれど、もっと別の……。


「皆の誤解を解きたいのです。それに、真実が知りたいと思います。それがやりたいことです。楽しくはないでしょうが……そうしないと自分の人生を進めないような気がして」


 口に出してみて、ようやく分かった気がする。単純なことだ。冤罪を晴らしたい。王族の方々から直接真実を聞きたい。そして、彼らの理不尽な感情で振り回されていたのだとしたら、復讐がしたい。それだけだ。


「そっかー……じゃあ仕方ない」

「でも人間に飽きたら一緒に暮らそうね!」


「そうですね。飽きたら妖精になろうかしら」


「本当? やったー!」

「待ってるね!」


 二人を見ていると、妖精も悪くないように思える。もし妖精になったとしても、半妖精であるエルナンデス家の皆とは交流は切れないだろうし、楽しく過ごせそうだ。





 二人と分かれて家に帰る途中、私はすがすがしい気持ちになっていた。自分のやりたいことが分かったからだろう。


(もう呪いも跳ね返せたし、一度王国に戻って直接シャーロット様やルーファス様と話がしたいわ。きちんと真実を明らかにして、冤罪を晴らしたい。そうすれば堂々と生きていける……)


 帰ったら、三人に報告しよう。そして王国に戻る準備を始めよう。

 進むべき道が見えた気がして、目の前が明るくなった。早く三人と話がしたい。


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