第32話 呪い返し
数日間じっくり休んだおかげで、気力も体力もすっかり回復した。そろそろ森へ行って呪いを返してこよう。
「森へ行くのだろう? 僕もついて行くよ」
クラウスが申し出てくれたのだが、今回は遠慮した。妖精の力があるし、一人でも大丈夫だろう。
森へ向かうと、探す間もなくパールとルチルが待ち構えていた。
「リディア来たー」
「早かった! 嬉しい!」
二人は相変わらず無邪気にニコニコと出迎えてくれた。
「呪った相手が分かりましたので、呪いを返しに来ました」
「じゃあこれ!」
「返してあげて―」
ポンと黒い塊を手渡された。手に持つと、どれ程強い呪いだったのかがよく分かった。これをあっさり解いてしまうのだから、やはりこの二人は侮れない。可愛い顔をしているけれど、力の強い妖精なのだ。
(私に返せるかしら? 確か、相手を思い浮かべて投げる……)
以前二人が言っていたことを思い出しながら、黒い塊を空へ放った。
放たれた呪いは、ふわふわと飛んで消えて行ってしまった。これで合っているのだろうか……。
「成功だよー」
「一発で返せるのはすごいんだよ!」
呪いが消えた方角を不安そうに見つめていた私に、パールとルチルが楽しそうに声をかけてくれた。どうやら上手くいったようだ。
「パール、ルチル、ありがとうございます。お二人のおかげで死なずに済みました」
心からお礼を言うと、二人は笑みをますます深めた。
「どういたしましてー」
「お礼に遊んでよ!」
この間も遊ばずに帰ってしまったのだから、今日は少し遊んでから帰るべきだろう。彼らへのお礼はそれくらいしか思いつかない。
「分かりました。では少し遊びましょう!」
「やったー! リディアと行きたいところがあるの!」
「森の奥! 行こー」
私が快諾すると、パールとルチルは飛び上がって踊り出した。遊ぶだけでこんなに喜んでくれるなんて、こちらとしてもありがたい。
二人の踊りを眺めていると、周囲の景色が変わっていることに気がついた。どうやら森の奥に連れてこられたようだ。目の前には見たこともないくらい大きな気がそびえ立っていた。
(大きな木ね……この森を守っているような温かさを感じる)
「ここが二人の連れてきたかった場所ですか? 素敵な木ですね」
「そう! 聖女の力を作れる木なんだって!」
「リディアが気に入ると思ったの!」
「え? ここで聖女の力を生み出しているのですか?」
「えーっと……この木から作られた杖が、聖女を目覚めさせるんだって」
「他の妖精に聞いたのー! なんか難しい話だった……」
どうやらパールもルチルも詳しくは知らないようだ。それでも私が元聖女だったから連れて来てくれたのだろう。
(この木から作られた杖……それで私は聖女になったのかしら。一体誰が? ルーファス様? でも彼にそんな権限があるとは思えない。まさか国王?)
考えを巡らせても予想の域を出ない。聖女の力による害もなくなったので、そんなに気にしなくても良いのかもしれない。
木に触れてみると懐かしいような感じがした。自分の中の聖女の力と木のエネルギーが共鳴しているような感覚だ。疲れが取れるような感覚に似ていた。
「連れて来てくださってありがとうございます。この木に触れると落ち着きます」
「そうでしょー! リディア疲れてたから」
「これで悩みなくなった?」
「え? 私、そんな風に見えていましたか?」
てっきり遊ぶために連れてこられたと思っていたので、驚いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます