第四章 真実
第27話 シャーロット王女の秘密
ゴーシュラン王国へと飛ばした一枚の葉は、王宮の中に入り込んでいた。私は意識を傾けさえすれば、そちらの様子をいくらでも確認できた。
(すごく久しぶりね。ここで暮らしていたなんて、今はもう考えられないわ。……あ、シャーロット様!)
王宮をぐるぐると徘徊していると、ようやくシャーロット様を見つけた。何かの公務から戻られたところのようだ。少し疲れた表情をしている。
「しばらく部屋で休むわ。今日はもう予定はなかったはずよね?」
「はい、本日の公務は以上になります。ゆっくりと休んでください」
執事と会話しながら、部屋へと戻っていく。休まれるようだけど、部屋までついて行ってみよう。昔はシャーロット様の部屋で遊んだこともあったけれど、お互い歳を重ねてからは行き来しなくなっていた。
(人の部屋を覗き見するなんて……。お父様、お母様、こんな娘に育ってしまったことをお許しください。これしか方法がないのです。この件が片付いたら、もう二度としません!)
心の中で弁解しながら、シャーロット様の後ろにこっそりとついて行った。
シャーロット様の部屋は可愛らしい家具で統一されていた。とても明るく素敵な部屋とは対照的に、シャーロット様は暗い顔をしていた。彼女はため息をつきながら、ベッドに腰かけた。
(こんなにも暗い表情のシャーロット様は初めて見たわ。公務がお忙しかったのかしら……)
長い時間ベッドの上で目を瞑っていたシャーロット様だったが、何かを思いついたように机へと向かった。
そして本棚から分厚い本を取り出すと、何かを書き込み始めた。
覗き込みたかったが、あまり近づきすぎると分身がバレてしまうかもしれない。葉をゴミ箱にでも入れられたら、その後の動きがとりづらい。後ろからこっそり様子を見るだけにしておこう。
(何の本かしら? あ、違うわ。あれは日記帳なのね。何を書いているのかしら)
シャーロット様は書きながら何度もため息をつき、筆を止め、書いた言葉を消したりしていた。それでもしばらくすると満足したのか、日記帳を閉じて使用人を呼んだ。
「お兄様に会いに行くわ。時間をとってもらえるか確認してきてちょうだい」
どうやらルーファス様に会いに行かれるようだ。ついて行くか悩んだが、それよりも先ほどの日記帳が気になった。シャーロット様が部屋を出たら、内容を確認してみよう。
(部屋まで覗いたのだから、もう日記帳も見てしまいましょう。今更罪悪感を感じたって、仕方ないわ。シャーロット様、失礼しますね)
シャーロット様が部屋を出ていかれた後、私は日記帳を取り出した。
(私の姿は葉だけれど、普通に物を動かせるのは便利ね。妖精の力って何でもアリなのかしら)
呑気に考え事をしながら日記帳をペラペラとめくると、そこにはシャーロット様の思わぬ一面が記されていた。
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