第26話 容疑者
エルナンデス家に戻ると、ヘルマンさんもクリスティーナさんも、ホッとしたように出迎えてくれた。
「クラウス、リディアちゃん! 良かった……もう少し遅かったら迎えに行こうと思っていたのよ」
「無事に帰ってこられて良かった。リディア、瞳の色が戻っているね。呪いが解除できたようで何よりだ」
「それが……完全に解けた訳ではないのです」
「それは、どういうことだい?」
不思議そうなヘルマンさんとクリスティーナさんに事の顛末を話した。
「……という訳でして。ヘルマンさん、もう少し呪いについて知っていることを詳しく教えてください。手がかりが欲しいのです。何人かに絞れれば、妖精の力で調べられますから」
「そうだな……確か誰かを呪うには、その相手に触れる必要があったはずだ。リディア、初めて息苦しさを感じたのは死刑判決を受けた日だと言っていたね。その直前に誰かと接触しなかったかい?」
当時、私に触れたがる人なんていなかったわ。私を連行していた警備隊の誰かかしら? あぁ、警備隊の顔なんて覚えていないわ。何人もいたもの。あの中の誰かだとしたら、探すのは面倒ね。
いえ、それとも……
「まさか、シャーロット様……? いいえ、そんなはずないわ……」
「シャーロット様? ゴーシュラン王国の姫君か……。触れる機会があったのかい?」
「判決を受けた後、駆け寄ってきてくださって……それで……。でも彼女は違うと思います。彼女が追放に手を貸してくれたのですから。私を助けてくれたのです!それに……っ!」
それに、お守りも渡してくださった。あれがなければ森を抜けられなかったはずだ。そう言おうと思った時、パールとルチルの言葉を思い出した。
『それ、確かにリディアを守ってるけど……リディアが持ってると良くないよー』
『気持ち悪いもん。だから私達が貰ってあげる! 一石二鳥でしょ?』
(お守りにも何か仕掛けてあったとしたら……? パールとルチルが嘘をついているようには見えなかった。何が真実なの? シャーロット様……!)
「リディア、君が彼女を信じたい気持ちはよく分かった。でもそれなら、尚のこと調べなければならないよ。調べて何もなければ、彼女を本当に信じることができるだろう?」
黙り込んでしまった私を見て、ヘルマンさんは優しく笑いかけてくれた。
そうだ。本当に信じたいのなら、調べてみるしかない。シャーロット様が無実だと分かれば、安心できる。
「分かりました。まずはシャーロット様を調べてみることにします。自分の分身を作り出せるようになったので、ゴーシュラン王国に送り込んでみます……」
「そんなことが出来るのか……。相当力を貰ったようだね。あまり無理をしてはいけないよ」
「はい、大丈夫です。疲れたらすぐに中断します」
まだ慣れていない力を使うのだから、無理をしないようにしないと。とりあえず、ターゲットをシャーロット様に絞って、何日か探ってみよう。
私は力の一部を一枚の葉に込めて、ゴーシュラン王国へと飛ばした。これでシャーロット様の周辺を観察するのだ。
(どうか、何もありませんように……)
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