第24話 妖精の力

 呪いを完全に解くには、かけた人に跳ね返さなくてはいけない……。相手が分からなくても返せるものなのかしら?


「誰が呪いをかけたか分からないのです。そもそも、どうやって跳ね返すのですか?」


「簡単だよー。相手を思い浮かべて、えいってコレを投げるの!」

「そしたら相手に呪いがドーンって戻るんだよ!」


 なるほど。やはり相手が分からないと跳ね返せないようだ。


「では、相手を早急に探し出します。パール、ルチル、その呪いはいつまでに跳ね返せばよいのですか?」


「本当は今すぐだよ! でも、せっかく取り出したのに、リディアに戻っちゃうのはもったいないからー」

「さっきのお守りに入れて持っててあげる! 次の新月くらいまでは大丈夫だよー」


 そう言ってパールとルチルは、シャーロット様のお守りの中に黒い塊を入れてしまった。

 次の新月……今日が満月近くだから、あと半月くらいね。あまり時間がない。聖女の力をむやみに使えない今、どうやって探せばいいのかも分からない。


 (どうにかしてパールとルチルの力を借りられないかしら? うん、言うだけ言ってみよう)


「ありがとうございます。でも……探し出せないかもしれません。王国には戻れませんし、何か方法があれば良いのですが……。もしダメなら呪いが戻ってきてしまいますね……。そうしたら森には来られません」


 自信なさげに話すと、二人は少し慌てていた。


「それじゃあリディアに会えなくなっちゃう! 僕らが手伝ってあげるー!」

「うんうん! 力を分けてあげるから、絶対見つけてきて! それで、また森に来てよー」


 どうやら協力してくれるらしい。二人を騙しているような気分になったが、他に方法がないのだから仕方がない。


(ごめんなさい。今度たくさん遊ぼうね……!)


「リディアー。手、出して―」

「力、分けるからね!」


 私が心の中で誓っていると、パールとルチルが、クラウスを押しのけて私の手を片方ずつ握った。握られた手が段々と熱くなってきて、不思議な力が流れ込んでくるのを感じた。


(これが妖精の力なの? 強すぎる……私はとんでもない力を手にしたのかもしれない)


 聖女の力が目覚めた時と少し似ていたが、力の強さが桁違いだ。


「はい! もうオッケーだよ」

「これで帝国からでも犯人探せるでしょー?」


「あ、ありがとうございます。これなら大丈夫です……。すぐに見つけて、またお二人に会いに来ますね」


 茫然としながらなんとか答えると、二人は無邪気に喜んだ。二人の言う通り、こんな力があれば、どこからだって探し出せる。そんな予感がした。


「やったー! またリディアに会えるー」

「早く見つけて来てね!」


 飛び回る二人と立ち尽くす私を見て、クラウスは心配そうな顔をしていた。


「リディア、大丈夫だった? あいつらに何をされたんだい?」


「大丈夫です。妖精さんの力を分けてもらったのですか、思った以上に強すぎて、ビックリしてしまいました」


 笑って見せると、クラウスは少し安心したようだった。


「それなら良かった。じゃあ一旦帰って、呪いをかけた人物を探そうか」


「はい。……パール、ルチル、また来ますね。それまで待っていてくださいね」


 クラウスと二人で帰ろうとすると、パールとルチルは私達を引き留めた。


「ねえねえリディア、そろそろ力を出しっぱなしにするの止めたらー? 僕らは心地良いけど、死んじゃうよ?」

「そうだよー。もう制御できるようになったでしょ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る