第23話 差し出す対価

(シャーロット様のお守りが熱い……前と同じだわ。それに光ってる)


 パールとルチルはクラウスのことを邪魔だと言った。私を惑わすのを妨害したからだろう。でもお守りは邪魔なだけでなく、嫌な感じがすると言った。


「このお守りは大切な方からいただいたものなのですが、嫌な感じというのは一体どういう事でしょう?」


「それ、確かにリディアを守ってるけど……リディアが持ってると良くないよー」

「気持ち悪いもん。だから私達が貰ってあげる! 一石二鳥でしょ?」


 どうして私が持っていると良くないのだろうか。二人の言っていることは、ふわふわとしていて掴みどころがない。


(でも、二度も拒否したら呪いを解いてもらえないかもしれない……。シャーロット様、ごめんなさい。でも他に方法が見つからないのです)


「では、このお守りを差し上げますから、呪いを解いていただけますか?」


 私が光っているお守りを差し出すと、二人は笑みをいっそう深めた。


「やったー! いいよ!」

「完全に解いてあげるー」


「ありがとうございます、よろしくお願いします。あの、先ほども言ったのですが、そのお守りは大切なものでして……お二人にも大切にしていただきたいのですが」


 気持ち悪いと言っていたし無理なお願いかもしれないが、無下にしてほしくはなかった。


「もちろんだよーリディアから離せば気持ち悪くないし」

「これ使って遊ぶんだー」


「良かった……ありがとうございます!」


 パールとルチルはお守りの周りをくるくる回っていたが、しばらくすると満足したのか、守りを小さくするとパールのポケットに仕舞いこまれた。


「じゃあ、呪い解いてあげるー」

「目、瞑っててねー。クラウスもだよー」


 そう言われて慌てて目を閉じる。縋るようにクラウスと握っていた手に力を込めると、反対の手も握ってくれた。向き合った状態になったが、目を閉じているせいでクラウスの様子は分からなかった。


(どの位かかるのかしら? 前はすぐ終わったけれど……)


 しばらくの間、パールとルチルの笑っている声だけが響いていた。


「解けた! もういいよー」

「目、開けてー」


 だいぶ長い間目を瞑っていたように思う。ゆっくりと目を開けると、クラウスがこちらを見ていた。


「リディア……目の色が! こんなに綺麗な色をしていたんだね。空みたいだ」


 私の目を覗き込んで、とても嬉しそうに笑ってくれた。


「解けたのですね! 良かった……。パール、ルチル、本当にありがとうございます!」


「どういたしましてー! リディアの目きれい!」

「私もこっちのリディアが好きー」


(本当に解けたのね……実感がわかないけれど、目の色が戻っているのは確かね)


 ホッとしたら身体の力が抜けてしまい、その場に座り込んでしまった。クラウスが支えてくれたから、倒れこまずに済んだ。


「大丈夫かい? 少し休もう」


 クラウスは私の背中をさすりながら、水を差しだしてくれた。ありがたく受け取ってごくごくと飲んでいると、パールとルチルが近づいてきた。なにか黒い塊のようなモヤモヤしたものを持っている。


「はい、これ呪いだよー」

「呪いをかけた人に返さないといけないでしょー。跳ね返さないと、リディアの中に戻っちゃうよ?」


 二人が当たり前のように告げた事実は、驚くべきものだった。クラウスも初めて知ったようで、驚いていた。


「そういう事は先に言ってくれ!」


「えー知ってると思ったんだもん」

「怒らないでよークラウス怖い!」

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