第16話 疑惑 ※ルーファス視点

「くそっ! 何故なんだ!」


 リディアを送り出してから数日、リディアの居場所が特定出来なくなっていることに気がついた。

 身につけなくてもネックレスそのものの場所の特定は出来るはずなのに、今は何の反応もない。


(無事に森を抜けて帝国に入ったことは確認できたのに……)


 ネックレスが壊れたのか?それともが何かに阻まれている……?


(ネックレスの力は強力なものだと聞いていたのに、こんなにもアッサリと使えなくなるなんて……くそっ!)


 あのネックレスは、とある呪術師から高額で買い取った物だ。世界の裏側にいても場所がわかると言っていたのに、どうやら粗悪品をつかまされたようだ。





 とにかく、リディアが無事なのか確かめなければならない。急いで何人か帝国に向かわせているが、まだ連絡は来ていない。


(森を抜けたらすぐに隣国なのに、普段は迂回しなければ帝国に辿り着けないから、あと三日はかかるだろう)


 リディアが森を抜けられたのは聖女だからだ。あの森は魔獣こそ出ないが、王国の人間は一度入ると出てこられないと言われている。昔から特別な人間のみが通れるという言い伝えがある。

 リディアが無事に通り抜けられたのだから、特別な人間とは聖女のことなのだろう。


 あの森のせいで隣国であるスカイテルーシ帝国とは、あまり交流が盛んではない。森を迂回するルートは距離が遠すぎる。不便だが、その不便さがリディアの亡命先にはピッタリだった。


「あぁリディア、無事でいるのかい? 僕がいなくて泣いているかもしれない……今すぐに君をこの胸に抱きしめて、閉じ込めてしまいたい」


 離れていても居場所さえ分かれば安心できるのに、今はそれすら叶わない。もどかしかった。


(無事でいたら、きっとリディアからも連絡が来るはずだ。あぁ、待ちきれないよ……!)





 事件の真相も探らせているが、新しい事実は全く出てこない。


(これだけ調査しているのに、毒やリディアの万能薬についての情報だけ集まらない。だれかが周到に隠しているようだ)


 これほど上手く隠ぺいされているのなら、王族の誰かが関与しているのかもしれない。……いや、お父様やお母様、シャーロットはリディアのことを好意的に見ていたはずだ。よほどの事情があったとしても、死刑に持ち込むような方法をとるとは思えなかった。


 それにリディアに関して、気になることがもう一つだけあった。本人には告げなかったが、最後に会った時、彼女の目の色が変化していたのだ。


(あれは、度重なる尋問や疲労からだろうか? それとも何か……)


 分からないことが多すぎる……。

 僕はただリディアをそばに置いておきたいだけなのに、どうして皆、僕の邪魔をするんだ!


 リディアがいなくなってから、イライラした気持ちが抑えられない。早く会いたいよ、リディア……!

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