6-2




見つけて、だなんて簡単に言う。



考えても考えても、記憶の片鱗にすら引っかからないのだけど。





「難しい顔して、どおしたの?」


ふわふわとしたツインテールの女の子。

赤いランドセルを背負って、私を覗き込む。



「あ、え。瑠奈ちゃん!」


急に話しかけられて、若干気が動転した。



「久しぶりだね、お姉ちゃん。」


瑠奈ちゃんはにっこり笑う。

笑うと瑠夏先輩に似ていて、やっぱり兄妹なんだなと実感。



「今日は、一人?」


「うん。学校からの帰りだよぉ。さっきまでお友達と帰っていたんだけど、お姉ちゃん見つけたから、今日はここでバイバイしたの。」


授業が終わるなり、学校を早々に退散したので、小学生の帰宅時間と被ったらしい。



「え、そんなお友達に先に帰っててもらってまで、私に声かけてくれなくても良かったのに。」


「んーん。瑠奈がお姉ちゃんと話したかったから。」


「そっか。じゃあ、公園で少しだけ話そうか。」



パッと見えた公園に行くことを提案すると、瑠奈ちゃんは快く頷いた。


寄り道とか、この際気にしないことにする。

瑠夏先輩に一報入れておけば大丈夫だろう。



二人で公園に足を踏み入れると、私にとってそこは懐かしくも哀しい場所だった。

子犬のシアンと出会った場所だったからだ。



誰もいないことをいいことに、二人でブランコを陣取る。


キィーキィー

揺らす度、金属の擦れる音がした。






「あのね、最近おにいが悩んでいるように見えるの。お姉ちゃん何か知ってる?」


え、瑠夏先輩が?



「ご、ごめんね。私何も知らないな。」


心当たりは、何もない。

週に二、三回は昼休みに屋上で会っているけど、これといって変化はない。



「そっかぁー。」



私の返事を聞いた瑠奈ちゃんは残念そうに返事をすると、ブランコを勢いよく漕いだ。

風を受けて、瑠奈ちゃんのツインテールが揺れる。



「学校では普通に見えるよ。でも、私も瑠夏先輩のこと、ちょっと気をつけて見てみるね。」


「うん。何かわかったら教えてねー。」


「わかった。」


瑠奈ちゃんはにっこり笑うと、ブランコを漕ぐのをやめた。





「それで、お姉ちゃんは何悩んでるの?」


う。目敏いなぁ。



「バレてた?」


「うん。そんな眉間に皺なんか寄せて、難しい顔して歩いていたらバレバレだよ。」


困ったように言うと、瑠奈ちゃんはケラケラ笑う。


そんなに面白いことしていないんだけど、今時の小学生の笑いのツボとは謎が深い。



「思い出したいことがあるんだけど、それが全く思い出せなくて困っているの。」


「へー、忘れちゃったってことかなぁ。」


忘れた、か。

瑠奈ちゃんの言葉が心に刺さる。


「そうかもね。」


きっと、私は詩編先輩と過去にどこかで出会っていることを忘れてしまっているのだろう。


詩編先輩は、私自身で思い出してほしいと言う。



「考えても思い出せないことは、もう考えても思い出せないよ。」


「そ、そっか。」


厳しい意見だ。

小学生なのにしっかりしていて手厳しい。



「でも、きっとある時ふっと思い出すの。」


瑠奈ちゃんがまたにっこり笑う。


「ある時?」



「うん。きっと何かきっかけがあると思い出せるよ。」




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