5-3




「そういえば、詩編先輩って授業の出席数足りてます?」


なんだか、最近はサボりすぎなような気がする。



「あー。大丈夫。」


詩編先輩は誤魔化すように、にっこりと笑う。

けど。



「嘘ですね。」


さらりと否定してあげると、嫌な顔をした。



「どうしてわかったの。」


結構不満げだ。

嘘がバレていないとでも思ったらしい。


「嘘つくとき、あー、とか、んー、とか言うのやめた方がいいですよ。」


そう指摘すると、詩編先輩の顔がこわばった。


何か、おかしい。

嘘つく時の癖を見抜かれたくらいで、そんなに動揺するものなのか。


微妙な違和感に首を傾げつつ、詩編先輩を見る。



さっきの強張った顔がまるで嘘かのように、にっこりと微笑まれた。


あ、目が合った。深淵なるブルー。




「そんな癖があったなんて、知らなかったなぁ。」


と言うか、本題からずれている気がする。



「それで、授業は結構ヤバイんじゃないですか?」


「この間、数学の先生に呼び出されたね。」


やっぱりかー!

でも、数学。私の予想は体育の先生だったんだけどな。



「ほらー!ちゃんと出ないと留年しますよ!」


「留年したら、君と同い年になれるから、悪くないかもねぇ。」



「そんなこと言っている場合じゃありません!」


ぴしゃりと言い放つと、ヘラっと笑われた。


おい、こちとら心配して大真面目に言ってるんだぞ。





「なんか揉めてんな。」


そこへ、タイミングよく瑠夏先輩が屋上に現れる。

内容まではわからなくても、声は聞こえていたらしい。





「瑠夏先輩、聞いて下さいよ。」


強い味方が現れて、私は早速報告だ。



「あっ、瑠夏には言わなくていいって!」


詩編先輩が慌てた様子を見ると、やっぱり瑠夏先輩に隠していたらしい。



「なんだ?」


「詩編先輩ったら、授業の出席日数やばいですよ。数学の先生に呼び出されたって。」



「あーもう。」


詩編先輩が諦めたかのように嘆く。



「で、なんて言われたんだ?」


しかし、ここで瑠夏先輩はすぐに怒るかなって思ったのだけど、私の予想は外れた。

意外にも状況をしっかり問いかける。



「普通に授業出席しろって。まあ、確かに数学は昼休みの後が多くてサボってたからなぁ。」


「そうか。ちなみに、今日も数学だぞ。」


困ったように話す詩編先輩に瑠夏先輩が忠告する。



「仕方ない。出席するか。」


諦めたように呟くと、詩編先輩はゴロンと屋上に寝っ転がる。


そう言いつつ完全に寝る体勢に入ってるんですけどー!


今日も今日とて良い天気。

お昼寝日和なのは否定しないが、本当にちゃんと授業には出席してほしい。

こっちが心配になる。


「数学、嫌いなんですか?」


「うーん。嫌いかどうかはわからないけど、文系科目より出来ないのは確かだね。」


目を閉じながらふわふわ笑う詩編先輩は、なんだか風船のようにどこかに飛んで行ってしまいそうな気がした。



「いや、嫌いだろ。サボる回数が他の科目に比べて多い。」


「ぐうの音も出ないな。」



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