5-2





「あ、瑠夏先輩。」


「おお。」



珍しく誰もいない廊下で行きあった。


こんな日もあるものか、と思う。

時は放課後だった。


たまたま先生に雑用を押し付けられて居残り、やっと終わって帰るところ。




「今日は詩編先輩は一緒じゃないんですね。」


なんだかセットの感覚があるので、気になって聞いてみる。



「ああ、放課後はあまり一緒にはいないんだ。」


そうなのか、と思う。


聞くと、今日は瑠夏先輩は保健委員の仕事があったらしい。

例の、似合わないやつだ。


痛い目にあったから、もう笑うなんてことしないけど。



「そうなんですね。」


周りに人がいないことをいいことに、私と瑠夏先輩は立ち話を始める。



「そういえば心愛から連絡があった。アメリカでの生活が落ち着いたって。」


「そうですか。元気そうでしたか?」


「ああ。健康に悪いから、カフェオレをやめて、ココアを飲むとか、どうでもいい話を聞かされた。」


どうでもいいと言いつつ、瑠夏先輩は嬉しそうだった。



「やっぱり心愛先輩と遠距離恋愛すればいいじゃないですかー。」


勿体無いなっと思う。


結構お似合いだったから。



「そもそも付き合ってたときから、恋愛関係はなかった。」


からかうように言ってみたら、思いの外、真面目に返答された。


なんだ、瑠夏先輩って変なところで真面目だ。




「心愛先輩、可愛いのにな。」


「今の俺には、お守りしなきゃならん奴らがいるから、しばらくは恋愛は結構。」


仏頂面で返された。



「お守り!?それって、詩編先輩・・・?」


確かに詩編先輩は手がかかりそうだ。


授業はすぐにサボるし。

意味わからないこと言い出すし。



「奴らって言っただろ。バカが。」


「バカ!?」


「お前もだって言ってんだ。ばーか。」


「ええー。」



口先では否定しておいたけど、今まで散々迷惑をかけていることは自覚済みだ。


瑠奈ちゃんもいることだし、世話焼き気質なのだろう。

だから、なんだかんだ言っても楽しそうな瑠夏先輩に、まあこれでもいいかと思った。




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