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パタリと、本を閉じると、詩編先輩はまだそこにいた。
「家出した身勝手な主人公も、少年を拾って利用した女も、病気の妻から逃げた旦那も、全部俺自身を形容しているんだよ。引いたでしょ。」
私の方は決して見ずに、空を見上げて自嘲気味に言う。
自分から話しておいて、まるで知られたくなかった、と。
そんな顔をしながら告げる。
色素の薄い髪が風に揺れる。
「俺は君が思ってるほど、綺麗な人間じゃない。」
どうして、そんなことを言うの。
まるで、私を突き放すみたいに。
まるで、サヨナラを告げるみたいに。
「もう、会うのはやめよう。」
詩編先輩のことを知りたいと思うことは罪なのか。
その天罰が下ったのかもしれない。
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