3-10



翌日もやっぱり雨だった。

じめじめとする校舎内にそろそろ嫌気がさしてきた。



「お前、見ただろ。」


昼休みに教室を出て人気のない廊下を歩いていると、背後から瑠夏先輩に声をかけられた。




「見てません。」


何を、とは思わない。

瞬時に昨日のことだとわかってしまったからだ。



「じゃあ、聞いてただろ。」


「き、いてません。」


「何を、とは聞かないんだな。はい、ダウト。」


瑠夏先輩は悪戯が成功した子供のように笑う。




「すみません。聞くつもりはなかったんです。」


怒ってるかな、なんて思ったけど。

瑠夏先輩が怒っている様子はなかった。





「別にいいけどさ。1つお願いがある。」


「はい。」


瑠夏先輩の顔を見ながら、なんだか面と向かって話すのは久しぶりだなって思った。





「このこと詩編には言わないで。」


すごく真面目なトーンだった。

それでいて、有無を言わせない圧力も。




「・・・なんで。」


昨日の会話から察するにも、この会話から察するにも、この瑠夏先輩の彼女の件には、詩編先輩が少なからず関わっていることは察する。


「いいから。」


どうして当人には何も言わないのかと聞こうにも、瑠夏先輩は理由すら教えてくれないようだった。



「わか、りました。」



圧力に耐えかねて頷くと、瑠夏先輩はそのまま何も聞くなとばかりに、その場を去って行った。

私はただただ、その場に呆然と立ち尽くすしかなかった。




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