3-9



とある昼休み。

今日は雨だから、詩編先輩とは会えない日だ。


さみしいと思いながらも、私は一人考え事をしながら廊下を歩いていた。


頭の中は今話題の瑠夏先輩のことだ。




瑠夏先輩って、どういう人だろう。


楽観的で、ポジティブで、羨ましいほど明るい。

妹思いで、すごく優しい。


・・・・・・ああ、ダメだ。

頑張ってもそれくらいしか、私は瑠夏先輩のことを知らない。





悶々としながらも人気のない階段を登り始めると、ふと声が聞こえた。


「お前そろそろ逃げるのやめたら?」


あ、瑠夏先輩だ。



「やだ!」


悲鳴のように聞こえたこの声は、瑠夏先輩の彼女の声だろう。



「本当は、もうわかってるんだろ。」


「怖いもん。」


「怖くったって、逃げていいわけじゃなことくらいわかってるだろ。」



なんだかお取り込み中のようだ。


すぐ上の階まで行きたかっただけなので、瑠夏先輩たちに鉢合わせをすることはないだろうと踏む。

早く立ち去ろう。






「瑠夏までそーゆーこと言うんだ。」


瑠夏先輩の彼女の悲しそうな声。


聞いちゃいけないと思いながらも、耳は澄んでいてよく聞こえる。




「俺だってなぁ「言っちゃうよ!」


「あ。」







「詩編君の秘密喋っちゃうよ。」



「え?」


驚きすぎて、声が出た。

しまった、と思い慌てて口を塞ぐ。



詩編、先輩の秘密?

なんでここで詩編先輩の話が出てくるのだろう。




「わかった。もう言わないから。落ち着け、な?」


慌てて立ち去りながらも、私の耳は瑠夏先輩が彼女を諌める声を捕らえていた。




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