3-5


しばらく瑠奈ちゃんとお話をしていると、本格的に辺りが薄暗くなってきた。



「すみません。兄妹のお出かけ邪魔しちゃって。」


私ははっとなって瑠奈ちゃんとの会話を打ち切り、瑠夏先輩に謝る。



「いや、もう帰るところだったからいいんだ。」


瑠夏先輩が首を振る。




「じゃあね、瑠奈ちゃん。」


「うん。また今度話そうね。」



瑠奈ちゃんに別れを告げて、別れようとした時。


「じゃあ、瑠夏先輩もまた学校で。」


瑠夏先輩のスマホが急に鳴り響く。




「電話だ。」


スマホを取り出して画面を確認した瑠夏先輩が呟く。



「出ていいですよ。瑠奈ちゃんと一緒に待ってます。」


「悪い。」


窺うように見られたので、私は頷いた。




瑠奈ちゃんも「もう少し一緒にいられるね。」とにっこり笑って、私の方へ来る。


その様子を確認した瑠夏先輩は、遠慮がちに電話を取った。




「今すぐ?無理だって。今妹と外出してるし。」

「んなこと言ったって・・・。」

「待ってて。一度妹を家に送ったらすぐにそっちに行くから。」


瑠奈ちゃんが乗ったブランコを押してあげながら、瑠夏先輩を待つ。


暗くなって人気がなくなったせいか、瑠夏先輩の声はよく響いていた。

なんだか少し押し問答をしているようだ。

相手は、例の彼女なのだろうか。


「はぁ。困るって・・・。」

「ちょっと待ってて。」


しばらくすると電話を終えた瑠夏先輩が戻って来る。



「悪かったな。」


少し困った様子の瑠夏先輩が申し訳なさそうに謝る。



「あの、大丈夫なんですか・・・?」


「あー、あんまり・・・。」


踏み込んでいいのかわからず遠慮がちに問うと、瑠夏先輩は微妙な顔をした。





「私にできることがあれば、何か手助けしますよ?」


思い切って提案する。



「いいのか?」


瑠夏先輩が迷いながらも、窺うように私に問いかけた。



「瑠夏先輩とは、その、友達ですから。」


友達、と言うのに少しだけ緊張した。

だって、そんなこと言うの初めてだ。


恐る恐る瑠夏先輩を見ると、嬉しそうな、でも申し訳なさそうな顔をしていた。

これは、やっぱり私と瑠夏先輩は友達でいいのかもしれない。




「すまない。」


「ありがとうと言ってほしいです。」


目尻を下げてなんとも言えない顔をする瑠夏先輩に思ったことを言う。



「サンキュ。」


ありがとうって言ったのに。

サンキュっと言ったのは、瑠夏先輩の照れ隠しだろうか。



「それで、どうしたらいいですか?」


「これから、すぐに行かなければならないところが出来た。」


「はい。」


彼女ですか?

そう聞こうとしたけど、やっぱりやめた。


瑠夏先輩が話してくれるのを、待とうと思う。



「詩編を呼ぶから、それまで瑠奈を見ていてほしい。」


うん、それなら私にも出来そうだ。



「わかりました。じゃあ、プリン一個で。」


「おう。」


「冗談です。」



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