3-4


あれから、私たちは近くの公園へ移動した。


夕方だったため、遊んでいた子供達がちょうど帰っていくところで、公園内はあっという間に静かになった。



「瑠奈です。おにいがいつもお世話になってます。」


瑠夏先輩の妹の瑠奈ちゃんは、にっこり笑って自己紹介をした。

普通にしていると、先輩とはあまり似ていなかったが、笑うとそっくりで微笑ましかった。



「お世話してるのは俺の方だっつーの。」


そんな瑠奈ちゃんの挨拶に瑠夏先輩が突っ込む。


確かに瑠夏先輩にはお世話になりっぱなしだが、小学生の瑠奈ちゃんを目の前にして、私としてはそれを認めるわけにはいかない。

というわけで、私の頭の中で、瑠夏先輩をスルーすることが決定された。



李鈴リズです。よろしくね。」


私もなんとか笑って、挨拶をする。


小学生相手だと、引っ込み思案も人見知りも発揮されなかった。

よかった。



「お姉ちゃんは、おにいの彼女?」


安心していると、瑠奈ちゃんから思わぬ質問をされる。

最近の小学生って!


「違うよ。」


頭の中は大混乱だったが、私は平静を装って答える。


貴方のお兄ちゃんは他に彼女がいますよー。

なんて余計なことは言わない。言えない。

だって、瑠夏先輩が恐ろしい剣幕で私を見ていたから。



「じゃあ、しー君の彼女?」


瑠奈ちゃんは、うーんっと考えて、今度は別の人を持ち出す。



「しー君?」


「詩編のこと。」


聞き慣れない名前に頭を捻ると、横から瑠夏先輩のフォローが入る。



なるほど。

詩編先輩のことか。

どうやら瑠奈ちゃんは詩編先輩のことを知っているらしい。



私が、詩編先輩の彼女?

いや、それはない。

想像すら、出来ない。


「いや、違うよ。」


私は又しても首を横に振る。





「そうなんだ。お姉ちゃんは好きな人いる?」


瑠奈ちゃんのくりっとした目が私を見つめる。

それは、恋愛の意味だろうか。



「いないよ。」


私は少し考えて答える。


前に詩編先輩にも同じような質問をされたな、と思い出す。

残念ながら、私はあの時と変わらず恋愛に疎いと自負できる。




「瑠奈はね・・・。」


瑠奈ちゃんは、ちょいちょいっと私を引っ張る。



「うん?」


屈めってことかな。

そう思って屈むと、瑠奈ちゃんがそっと近寄ってきた。




「おにいが好きなんだ。」


そして耳打ちする。


「秘密だよ?」っと言う瑠奈ちゃんに、なんだか私はほっこりして笑顔になる。


マセているかと思ったら、兄である瑠夏先輩が好きと言う。



可愛いなぁ・・・。


瑠夏先輩の方をそっと見ると、少し照れたようにそっぽを向いていた。

聞こえていたらしい。


でも、気づかないふりをしてあげているようだ。



瑠夏先輩が面倒見がいいのは、妹がいるからかなって考える。


瑠奈ちゃんの様子からして、普段の強面の瑠夏先輩からは想像できないほど、良いお兄ちゃんだ。


瑠夏先輩の新たな一面を知れて、嬉しく思う。



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