3-3


さて、友達が少ない私だって、休日に出掛けることもある。


目的は買い物、もちろん一人でだ。


両手に買い物袋を提げて、人目につかないように街中をうつむきがちで歩く。



「ほら、帰るぞ。」


不意に聞こえた、よく知る声。

私は吃驚して顔を上げた。



「まだ帰りたくない。」


「もう充分遊んだだろ。」


驚くことに、前を歩くのは女の子と手を繋ぐ、見たことのある後ろ姿。



「瑠夏先輩・・・?」


思わず呟く。


別に声をかけたつもりはなかったのに。




「あ?」


「え?」


呟きが聞こえてしまったらしい。


とんだ地獄耳だ。

詩編先輩といい勝負。



「って、お前か。」


振り返った瑠夏先輩が私だと認識すると、何故だか安心したように溜息をついた。



「ねぇ、この人だぁれ?」


私の姿を認識した女の子が、瑠夏先輩に問いかける。


瑠夏先輩に寄り添うように手を繋いだ女の子。

私のことを不審げに見つめる視線。

極めつけは、詩編先輩のあの発言と学校内のあの噂。



「かかかか彼女・・・?」


「なわけ。」


もしやと思い聞いてみたら、あっさり否定された。



「ですよね。こんな小さい子じゃ犯罪・・・。」


そう、瑠夏先輩が連れている女の子は幼いのだ。

小学校低学年くらい。


「だから違うって言ってんだろ。」


瑠夏先輩に怒られた。

私としては、もし彼女だったらっていう仮定の話のつもりだったのだが、うまく伝わっていないらしい。



「だって、詩編先輩が瑠夏先輩に彼女が出来たって・・・。」


とりあえず、言い訳。

詩編先輩のせいにしておこう。


「アイツ・・・。」


瑠夏先輩が呆れたように呟いた。



「で、この子は・・・?」


彼女じゃないなら、誰なのか。

私はさっきからずっと気になりっぱなしだ。


「妹だよ!!!」


察しの悪い私に、瑠夏先輩がキレた。


なるほど。

妹ね。

妹・・・・。

瑠夏先輩が妹の面倒を・・・。




「妹!?って、えーーー!?」


私はここが街中であることも忘れて叫んだ。



多くの人が私とついでに瑠夏先輩を訝しげに見た。

そして、ふがっと瑠夏先輩に口を塞がれた。






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