2-11



「詩編が紹介したいっていうから、お前の取り巻きのもっと派手な子かと思った。」


李鈴を見送った後、瑠夏は詩編に言う。




「あれは向こうが勝手に寄ってくるだけだし。それより、気に入った?」


李鈴が逃げ出したとき、迷わず追いかけた瑠夏をからかった。



「お前そっくりで放っておけねぇよ。お前が構う訳もわかる気がする。」


「うるさいな。」



からかったのは失敗。

思わぬ反撃を喰らって、詩編はむっとする。


だが、自分が臆病者な自覚もあるので、否定はできなかった。



「それで、どういう風の吹き回しな訳?

お前、自分の気に入ってるものは絶対に他人に譲らないタイプだろ?まさか、お前・・・。」


瑠夏は頭に過った不安を口には出せなかった。




「そんなことない。ただ、あの子に広い世界を見せてあげたいと思ったんだ。」


詩編はそんな瑠夏の様子を察したのか、冷静に否定すると、自分の正直な思いを口に出した。




似た者同士の自分とあの子。


だからこそ、閉じこもった殻から外へ出してあげたいと思った。




「あのことは話したか?」


瑠夏は不安な気持ちを振り払うように拳を握りしめ、別の質問をした。


「話してないよ。」


すぐに返ってくる答え。

まるで、瑠夏が問いかけてくるのを想定して、準備していたかのよう。




「話すつもりは?」


「ない。」


はっきりと断言した。

瑠夏は詩編のブルーの瞳に真っ直ぐ見つめられて、少しクラクラした。



漠然とした不安に襲われる。

何故だかわからないけど。


詩編がとても危うく見えて、瑠夏はどうしたらいいのかわからなくなった。




「七海ななみの二の舞にはすんなよ。」


少し考えて、そう忠告する。

七海、という名前に、詩編は一瞬瞳を揺らしたが、すぐに何も聞かなかったような顔をする。




「大丈夫。墓場まで持ってく秘密にする。」


詩編がにっこりと笑って、冗談まじりに言う。

だから、瑠夏も軽口をたたくようにからかった。



「ばれちまうぞ。」




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