2-5


オムライスを食べ終えて、化粧室に行った帰り。


ハンカチで手を拭きながら、次はどこへ行く予定だっけ?と考えていると、近くの席の女の子二人の会話が耳に入ってくる。



「ねぇ、さっきから思ってたんだけど、あの人たちかっこよくない?」


ちらりと目をやると、一人の女の子が明らかに詩編先輩と瑠夏先輩の方を指している。



あー、やっぱり目立つらしい。


特に、詩編先輩なんか髪色の色素が薄いから、結構目立つのだ。




「わかるー!一緒にいた女の子、どういう関係なんだろうね?」


もう一人の女の子が何気なく言う。


自分の事だと認識して、ドキリと心臓が跳ねる。



「さあ。でも、釣り合ってなかったよね。なんか地味な子だったし。」



釣り合ってない。


頭に水をぶっかけられて、急に冷静になった気分。

さっきまで、楽しい気分だったのに、最悪だ。


顔を顰めながらも、足を動かそうとする。



・・・え?

足が鉛のように重かった。


そして、頭の中で何かがフラッシュバックする。



何か、なんて言うけど。

本当はその正体を知っている。


どうしよう・・・。

どうしよう・・・。


サァーっと身体から血の気が引いていく感覚がする。

気づいたら、私の身体はガタガタと震えていた。




「それなー!ね、声かけちゃう?」


ぎゃははと、大きな声で笑う女の子たちの声をどこか遠くで聞きながら、私は必死で足を動かして先輩方の元へ戻る。





でも、席には座らない。座れない。


私はまた、捨てられるの・・・?


怖い、怖い。




怒りと。

自分が正しいと信じて疑わない目と。

裏切りと。


軽蔑。





「どうしたの?」



ただならぬ様子の私に、詩編先輩が心配そうな目を向ける。




「やっぱり私・・・、帰ります。」


にっこり笑おうとして、顔がゆがんだ。

震える手でお財布からお札を二枚出して、テーブルに置く。



「え?ちょっと・・・。」


「おい。」



戸惑いながら呼び止める二人に背を向ける。







「やっぱり、友達なんていらない。」



アイス珈琲の氷が解けて、カランと音を立てた。







私、最低だ。




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