2-4


最初に、三人でアクション映画を見た。


その流れで、お昼を食べるためにカフェに入る。

そして、三人揃って、オムライスとアイス珈琲を注文。



「まさか主人公が裏切り者だったなんて、衝撃の展開だったよな。」


アイス珈琲が届いて、瑠夏先輩がさっそくとばかりに、映画の感想を口にする。

彼はストローでアイス珈琲をかき混ぜていて、カラカラと音を立てながら。



「それね。流石の俺も想像できなかったなぁ。」


詩編先輩も、それに同意する。

アイス珈琲にミルクを入れながら。




「お前は気付けた?」


瑠夏先輩に何気なく話を振られて、一瞬ドキリとする。



「いえ、全然気づけなかったです。」


そう言いながら、首を振る。


あっ、でも。

そう言いかけて、私は口を閉ざした。



「他に言いたいこと、たくさんあるんじゃない?

瑠夏は、ちゃんと聞いてくれる人だよ。」


そんな私を見た詩編先輩は含みを持たせて、私に問いかける。


表に出したつもりはないが、私の心は詩編先輩にバレてしまっているらしい。



聞いてくれる、か。

口を閉すのは、もう何年も染み付いてしまった癖だ。

心の内で色々と思っていても、私がその全てを発言することは殆どない。


だって、聞いてくれなかったら?

昔の苦いトラウマのせいなのか、口を開くことに対して恐怖が付き纏う。



でも、詩編先輩が話していいよって言うから。

乗せられるように、私は口を開いた。



「でも、主人公が好きだった女の子に告白されたのに、断ったじゃないですか。そのときは断った理由が分からなかったんですけど、今思うと本当は敵だから、想いに応えられなかったんですね。振り返ると、伏線がたくさんあったのに、何で気付かなかったんだろうって思いました。」


少し緊張しながら、おずおずと自分が思ったことを話すと、詩編先輩も瑠夏先輩も相槌を打ってくれてホッとした。







「え、あれって好きだったのか!?俺はてっきり好意がないから断ったのだと思ってた。」


「瑠夏は恋愛に弱いからなぁ。」


「うるせぇ。」


詩編先輩の軽口に、自然と顔がほころぶ。




「伏線といえば、敵に銃を向けた時に、はずしちゃったじゃん。あれ、怖気づいたわけじゃなくて、味方だったからわざと外したってことだよね。」


「あ、確かにそうですね!」



映画の内容が想像以上に面白くて、三人ともテンションが上がった勢いで話し尽くす。


本当は話に入れるか不安だったけど、話題に困らないように映画を観に行くことにしたのだろう。

詩編先輩が色々と考えてプランを練ってくれたのが分かる。


詩編先輩がどうしてそこまでしてくれたのかは皆目検討もつかないけれども。





・・・楽しい。


一度口を開くと、楽になる。

口を閉ざして肩身の狭い思いをしてきた私にとって、二人との空間は息をしやすいものだった。



本当に、楽しい。

友達同士の話って、いつもくだらないこと話しているなって思っていたけど、こんなにもくだらない話が楽しいなんて知らなかった。



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