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夏という季節は好きでも嫌いでもない。


周囲の環境が変化する春と比べたら、マシな季節だ。



それなのに、今年の夏はちょっぴり楽しみで、ものすごく憂鬱だった。



詩編先輩と連絡先を交換したのはついこの間のことだった。


「友達を作ろう。」と、全然乗り気じゃない私に先輩はぐいぐい押してくる。


まずは俺の友達を紹介してあげる、と言われ、夏休みに先輩と先輩の友達の三人で遊ぶことになった。



そもそも詩編先輩の友達なら、その人も先輩だ。


友達じゃなくて、知り合いの先輩が出来るだけなのでは。

と思って、詩編先輩に言ってみたが、細かいことは気にしないと却下された。



詩編先輩は時々ものすごく強引だ。

そして、我儘だ。たぶん。


自分の要望は何が何でも押し通す。

その手段を、知っている。



先輩は、どうやって育ったのだろう。

どんな子供時代を送ったら、そんな風に堂々と歩けるのか。


考え出したら、キリがない。


そもそもこれは、考えて答えが出る問題ではない。

知りたければ、詩編先輩本人に聞かなければならない。


でも、私に聞く勇気は、持ち合わせていない。


余計なことを考えた。

目先の問題すら、解決していないのに。


ものすごく憂鬱だ。



引っ込み思案で口下手な私が知らない人と過ごすのに、どれだけ勇気がいることなのか先輩はわかってない。


そもそも、私は詩編先輩がいればいいって言ったはずだ。

それがどうして友達を作る流れになったのだろう。


そんなことを考えているうちに、とうとう先輩とその友達と会う日になってしまった。



朝起きた時に、熱があればいいな、なんて思って体温をはかったけど至って正常だ。


一瞬仮病を使って行くのをやめることも考えたが、それをしなかったのは先輩に会いたいと思ったからだ。

そして、詩編先輩の友達という存在に、少しだけ興味があったからだ。





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