2-1




何だかんだで月日は進み、気付けばもう夏休み間近だった。





「そろそろ友達出来た?」


セミの鳴き声を聞きながら、いつものようにお昼ご飯を食べていると、詩編先輩は唐突に問いかけてきた。


どこかで聞いたことある失礼なセリフだ。

前にも一度、同じことを聞かれた。



「友達いたら、こんなところで先輩と過ごしていないですよ。」


そう言いかえすと、「それもそうか。」と納得して笑う。



「友達、欲しくないの?あー、やっぱ今のなし。」


先輩は質問した後すぐに撤回した。


なにそれ。

まるで私に友達が出来て、昼休みに屋上に来なくなったら困るような感じ。


気まずそうにする先輩に、私はさっき撤回された質問の答えを口にする。






「詩編先輩がいれば、それでいいですよ。」




心からそう思う。


詩編先輩の方を見ると、驚いたようなブルーの瞳と目が合う。

少し嬉しそう。


照れたように口元を手で覆った先輩がポツリと呟いた。


ミーンミーンとセミの鳴き声が響き渡る。




「俺がいなくなったらどうするの。」


先輩が少し困ったように問いかける。



「私もいなくなります。」


迷わずそう返した私に、先輩は少し考えると、「よし、友達作ろう。」といつもの掠れた声で提案してきた。


なにその態度の変わりよう。




******

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る