1-9


「ねぇ、怒ってる?」


翌日、先輩は不安げに私に問いかけた。


今日はぼんやりとした曇りだった。



「怒ってませんけど。」


正しくは、一晩寝たら怒りは収まった。


そもそも怒っていたら、ここには来ない。

昼休みに、わざわざ屋上には来ない。


それをわかっていて聞いているのか。


もしそうだったら先輩はかなり性格が悪いと思う。

そもそも昨日の発言もわざとってこともあり得る。



「なんだ。」


私の返しに先輩は少し落胆したようだ。

ブルーの瞳に心なしか影が落ちる。


やっぱり昨日の発言は、わざと言ったように思う。


聞いてしまおうか。


いや、聞いてもどうせ落胆するだけだ。

いつも、そうやって裏切られてきた。



そう考えていたのに、詩編先輩の顔を見た途端、ブルーの瞳を見た途端、私の口からは自然と言葉が滑り落ちていた。




「怒っていてほしかったんですか?」


聞いてしまった。


恐る恐る聞いた私の問いかけに、詩編先輩は困ったように眉を落として、微笑した。





その微笑みが、太陽の光に照らされて、この世のものとは思えないほど美しかったのは、後生私だけの秘密だ。









「少なくとも俺は、君のことを知りたいのだけど?」





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