1-7
「また月曜日。」と、確かに約束したが、その日はしばらく来ることはなかった。
梅雨に入るこの季節、その日は朝からじめじめとしていて、とうとうお昼前にザアザアと雨が降り注いだ。
私はいつものごとく真面目に授業を受けてその日は過ごした。
いや、いつものごとく、と言うのは嘘。
少しだけそわそわしていた。
雨が降った時、私と詩編先輩は暗黙の了解で昼休みは屋上には向かわなかった。
それぞれの教室で、それぞれ過ごす。
でも、その日はなんだか落ち着かなくて、私は昼休みに屋上に向かった。
一段また一段と階段を登る。
もしかしたら、詩編先輩は待っているのではないか、と。
少しだけ期待して、屋上に通じるドアを開けて屋上に飛び出して、私は落胆と、納得した。
所詮、詩編先輩にとって私はたくさんいる知り合いの一人なのだ。
日常と化している先輩との日々は、やっぱり非日常。
晴れている日が特別なのだ。
雨が降っていない日が特別なのだ。
ポタリ、ポタリ、と髪の毛から水滴がしたたり落ちる。
「また月曜日。」と、その約束で私がどれだけ心待ちにしたのか、詩編先輩は知りもしないだろう。
一人屋上の真ん中に立ち、私は雨に打たれた。
そうだ、最初から期待なんかしていない。
先輩は学校の誰もが知っている人気者で、私は日陰に佇む雑草なのだから。
その後、二週間、梅雨が明けるまで私は詩編先輩に会いに屋上へ行くことはなかった。
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