第34話 ロングレンジ・ブラスター
このバカでかさで、ついつい決戦兵器と信じ切ってしまった。
なにも、コイツが自分で王都を破壊する必要はない。王都を破壊するには、オーバースペックすぎる。マーゴットの父親、つまり魔王ミルドレットに頼んでしまえば一発だ。
戦力として、もっとも邪魔なオレを足止めしておいて。
タキは、自分の戦闘力を知らしめることができる。
魔王からすれば、自分を殺しかねない戦力を押さえられるわけだ。
「クソ、動けやボケ! これからやねんぞ!」
おまけに、当のドラゴンは制御不能と来ている。
「制御系のトラブルかいな! 出力がデカすぎて、機体が耐えられへんとは! ビーム一発撃っただけで、こないになるとは。どこまでキッツイパワーやねん!」
コンソールを叩き、タキがドラゴンを無理やり起こす。
「アカン。退却や」
残存パワーを、タキは退却に費やすらしい。
「シェリダンは、目の前ですわ」
「飛んでるやつ相手に、手出しはできん! 作戦も台無しやとは」
「ですが、父を王都へ近づけさせることには、最低限成功しましたわ」
「……せやな。モモチ! 勝負はお預けや! せやけど覚えとけ! お前を倒すんは、ワシやからな!」
ブラックドラゴンが、空へ逃げていく。パーツまで捨てていった。そこまで軽量化しないと、逃げ切れないのか。機体を回収されないように、金属片はちゃんとボロボロになっていった。
「ニョンゴ、オレもタキとの勝負は預ける」
「それがいいね。先に王都への襲撃を止めないと!」
オレは出力を全開にして、王都へ。
「やばいな!」
「敵の本体だからね!」
魔物の大群が、王都へ押し寄せてくる。
中央にいるのが、魔王ミルドレットか。
王都の正門を守護しているのは、ジーンだ。
「ジーン、三時の方角から敵だ。兵隊はそっちに集中させろ。八時からの大群は層が薄いんだが、速度が早い。お前は冒険者たちと連携して、そこを攻めてくれ。オレは一番分厚い中央の本陣を始末する!」
上空から指示を送った。
「わかった。気をつけろモモチ!」
ジーンが、馬に乗って敵陣へ。
「で、どうするモモチ? 大技で潰す?」
「それもありだな。出力全開!」
オレは、シールドを「キャノンモード」に換装した。青白いラインがシールドを駆け抜けて、魔力をシールドの隅々まで行き渡らせる。長細い盾が真っ二つに開き、砲身が出てきた。
ニョンゴが、魔導リアクターを全開まで動かす。
ジーンたちを行かせたのは、この武器の威力で吹っ飛ぶのを防ぐためだった。
ミスリルの魔力を最大限に利用した、大技をブチかましてやるぜ。
「……いつでも撃てるよ!」
「吹っ飛べぇ! ロングレンジ・ブラスターッ!」
バイクのハンドルに搭載された、スイッチを押す。
青紫の光芒が、魔王軍の本陣を焼き払った。
「おおおお……」
我ながら驚異的な威力に、口が開きっぱなしになる。
「こんなヤバイ装備を作ってしまったとは」
「でも、まだ耐えているやつがいたよ」
本陣の戦力は、九割がた蹴散らした。
しかし、魔王ミルドレットは、また生きている。
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