第33話 嫌な予感
「行きますわ!」
ドラゴンの上から、マーゴットが飛びかかってくる。
「あなたとは一度、戦ってみたかったですわ! ジェンシャン・ナイト!」
「クソ!」
マーゴットの腕へ、オレはシールドを投げた。
「フン!」
タキがドラゴンの腕を動かし、シールドを殴って壊す。
「ジェンシャン・スラッシュ!」
ラスボスからの攻撃に、オレも思わず大技で対抗した。
「はああ!」
マーゴットが、腕を交差させる。両方の腕が、ドラゴンのそれへと変形した。これが、本来あるマーゴットの姿なのだろう。
岩山のようなウロコによって、オレの必殺技は弾け飛んだ。
「刀が……っ!」
ミスリル製の刀が、欠けた。
「痛う……くっ!」
マーゴットも無傷ではない。両腕が、使い物にならなくなったようだ。
ミスリルは自己修復力が高いが、相手の回復力を阻害する力もある。
「やりおるな、シェリダン!」
魔法銃から光弾を発し、タキがこちらをけん制した。
その間に、マーゴットがコクピットへ戻る。こちらへ「カッ!」と、火球を吐きながら。
「腕を斬られましたわ!」
「ムチャしおって! 様子見せえ、っていいましたやろうが!」
無謀な挑戦をしたマーゴットに、タキが説教した。
「ブレスのパワーは、いくらですの? 満タンですの?」
「あかん。飛んでるだけで、手一杯や! こんなに燃費が悪いんか! 動いてるだけで消耗しとるやんけ!」
どうも、動力に関してトラブルが発生したようだ。
「お困りのようだな!」
手から光線を放ちながら、オレはタキのいるコクピットに詰め寄る。
「城でひと悶着あったんや。それを始末しとったら、ガス欠や」
どうも、魔王の城でトラブルがあったらしい。タキはその騒動を収めた直後、この戦闘をふっかけたようだ。
「そもそも、どうして正面から来た? これだけの兵力があったら、王都だって消し炭じゃねえか。どうして、オレの前に?」
タキの作ったドラゴンは、オレだけをターゲットにしている。
だから、ライコネンにブレスを吐かなかったのだろう。放出されていれば、今頃オレたちもろとも死んでいた。
それだけで、戦争には勝てるはず。
なのに、タキはそれをしてこない。
「本当に、キミと戦うだけなんじゃないか?」
「いや。タキがそんなやつには思えない」
なにか、考えがあるはずだ。オレを惹きつける理由が。自分に注目して欲しい以外にも。いや、オレを引き付けておかないといけない理由といえば?
「モモチ、私も加勢する!」
馬に乗ったジーンが、オレの真下まで来た。
「どこを狙えばいい?」
槍を構えながら、ジーンがドラゴンに接敵をする。
「そうか!」
しまった。こんなことをしている場合じゃねえ!
「ジーン! 王都へ急げ! こいつはタダのおとりだ!」
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