第28話 ミスリルを手に
「また消えた! あのヤロウ」
「戦いながら、光学迷彩を修理するとはね」
ひとまず、鉱夫たちの無事を確認しないと。
「ケガはないか」
避難所にいたドワーフの一人に、声をかけた。
「ああ。ありがてえ」
ドワーフの鉱夫たちに、たいしたケガはないらしい。ドワーフとはいえ、全員が戦闘を得意とするわけじゃないようだ。相手も悪かった。あそこまで戦闘に慣れているとは。
「オラたちが大事にしていた、秘宝が盗まれちまった!」
血相を変えながら、一人のドワーフが避難所に駆け込んできた。
「どんなお宝なんだ?」
「ウォリハルカニウムって、緋色の魔法石だ」
盗まれたのは、バスケットボール大の赤い宝石だという。ミスリル以上の頑丈さと、膨大な魔法攻撃力を持つ。
「かつて、ウォリハルカニウムを使った兵器が、大陸一つを消し飛ばした事件があったそうだよ。それ以来、ドワーフたちが代々守り通していたんだって」
ニョンゴの調べた文献によると、海に大穴が空いている場所があるという。そこが爆心地らしい。
「ドレイクを使って、厳重に保管していた。しかし、あの鉄仮面ヤロウが制御不能にしやがった」
まさか、タキたちはオトリだったというのか? あれだけの立ち回りをして。
そのせいで、油断を生んでしまった。
「すまん、オレのせいだ」
「いいや! あんたのせいじゃねえ。命があるだけ、助かってる。あんたのおかげで、誰も犠牲者が出とらん。ありがてえ」
アイテムは奪われたが、ドワーフたちは楽観的である。
「貴重なアイテムは奪われたっぽいが、戦闘で負けたわけじゃない」
「でも、そのアイテムで相手が強くなったりしたら」
「その時は、オレたちがもっと強くなればいい」
「だよね!」
オレはニョンゴとハイタッチをし合う。といっても、ニョンゴはホログラム越しだが。
「あんたら、これを持っていっておくれ」
ドワーフが、青紫の鉱石をくれた。
「これは?」
「ミスリルだ。あんたら、これが必要だって言っていたから」
数日前から、ラショーより依頼を受けていたという。
「こんなにたくさん……あんな危険なダンジョンに入って、採掘していたのか?」
「そうだ。オラたちだって、街の平和を守ってるあんたらの力になりてえ。危険だろうが、あんたらのほうがもっと危険だ。やってやらあってんだ」
胸を叩きながら、ドワーフは誇らしげに語った。
「ありがとう。大事に使う」
「そうしてくれえ。あと、ドレイクの死体も調べたらええ」
ドレイクは、ミスリルを食って生きていたらしい。骨の成分を調べれば、ミスリルが含有しているはずだと。
それで、あれだけ頑丈で強かったのか。
「魔力鉱石ミスリルがアレば、あの鉄仮面に対抗できるかもね」
「ああ。使ってみよう。ドワーフたち、ありがとう」
オレは、すぐに王都へ戻った。
ラショーの工房で、さっそくミスリルを加工してもらう。
「もういっそ、全身ミスリルで固めよう」
「それがいいな。大盤振る舞いだ」
ニョンゴとラショーの意見が、一致した。
相手は、ミスリルを超える鉱石を手に入れたのだ。出し惜しみなんて、してられない。
「スーツの外装を頼めるかな? ワタシは内部構造をモモチと一緒に改造するから」
「おう! スーツの仕組みは、あらかた理解したつもりだぜ!」
オレも、提案をする。
「追加武装だが、やはり大型化するぜ」
シールドをスクトゥムサイズにして、分厚くする。速さより、安定性の方を選んだ。攻撃を防ぐから、薄くして速度を上げるより頑丈な方がいい。ドレイクとの戦いで、思い知った。
「それがいいな。防御面を考慮したコンセプトのほうが、お前さんらしい」
剣は、従来どおり刀でいく。それとは別に、盾を攻防一体の兵器として使うことにした。
「こういうことって、できるか?」
「もちろんさ。ワタシに、不可能はない!」
こうして、あーだこーだ言い合いながら、『
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