第27話 ドクター・イシロウ

 光学迷彩を破壊されたタキが、ドレイクに追いかけ回される。


「アホかくそ!」


 魔力を放つ銃で逃げながら応戦するも、硬いウロコに阻まれた。ブレスを吐けなくなった代わりに、舌やウロコが進化したようである。


 逃げ惑うタキを尻目に、今度こそ鉱石を……。


「もう一体、いやがった!」


 崖の下から、別個体のドレイクが。


「コイツらドレイクは、タキが放ったものか?」


 だとしたら、かなり厄介な相手だ。


「いや。もともと鉱山でずっと眠っていたのが、タキのせいで目覚めたらしい」


 どうする? どう打倒すれば?


 考えている間に、舌でパンチが飛んでくる。


「んなろぉ!」


 シールドで、防ぐ。しかし、あまりの衝撃にこっちが吹っ飛んでしまった。なんて打撃力だ。


「やべえ、シールドが!」


 あろうことか。シールドがドレイクの口に。


 しかし、舌を巻き付けながら食ったのがいけなかったのだろう。アゴの間に挟まってしまった。おかげで、口が開きっぱなしに。

 舌で引っ張り出そうとするが、完全に口唇を突き刺してしまっている。あれはそうそう抜けそうにない。


「チャンスだ!」


 オレは、ドレイクの口へと飛び込む。


「何をする気だい?」

「こうするんだよ! くらえ!」


 オレは、ドレイクのノドに光線を食わせた。


 外殻に向かって撃っても、おそらく硬いウロコに弾かれる。タキの攻撃で、立証済みだ。しかし、口の中はどうか。


 ドレイクの身体が、みるみる泡立っていく。


「とんでもないね、キミは」

「いやあ、ラショーのシールドが頑丈すぎるんだよ。だから、うまくいった」


 これで一丁上がりだ。ドレイクの素材を回収して、ダンジョンの魔物討伐だ。


「な……」


 やられたと思っていたタキが、ドレイクを倒しているではないか。


「ここにレアメタルがあるって聞いて飛んできたが、まさかお前まで現れるとは。ちょうどええ。化身ケシン!」


 タキが、銃身を胸元にかざす。

 金属製の包帯が、タキを包み込んだ。鋼鉄のバンテージが周辺の岩を砕きながら、タキの身体に巻き付く。

 最後に、タキのボディをマッシブな装甲が覆った。

 焦げ茶色のローブを纏って、最後にガスマスクのような仮面をかぶる。


「その姿は?」

「おう。これが最強形態やよ。その名もドクター・イシロウ!」


 イシロウ、ねえ。怪獣映画の監督からか。


「もっとわかりやすいところから取ると思っていたぜ」

「誰が見とるか、わからへんさかいな。ちなみに、イシロウ・タキは本名やで。それよりどないや。お前のスーツから着想を得たんや」


 ガワは、オレのヨロイより頑丈そうだ。無骨ながら、シンプルなデザインである。鋼鉄の包帯と二重にしてあるから、見た目以上に軽くて硬いだろう。


「お前とワシのどっちが上か、試したる!」


 タキことドクター・イシロウが、回し蹴りを繰り出す。科学者という肩書に反して、攻撃スタイルはアクション俳優的だ。


「てえい!」


 蹴りを弾きつつ、反撃のパンチを見舞う。


「おっと!」


 タキがパンチをかわす。


 オレの拳が、壁にめり込んだ。


 脇腹に、いい一撃をもらう。


 強引に腕を軸に回転し、タキの腹を蹴飛ばす。


「この!」


 後ろに飛ばされながら、タキが銃撃してきた。


 引っこ抜いた腕で、魔力の弾を防ぐ。


「コイツ思っていた以上に強いよ、モモチ!」

「素材がいいんだろうな!」


 魔族の素材を使っているからか、頑丈な上に強力だ。


「こっちだって!」


 オレは新武器のディスク・アックスを投げつけた。


「やや、これアカン、アカンで!」


 逃げ惑いつつ、魔銃で反撃を仕掛けてくる。


 タキの配下が、何かを見つけたと報告していた。


「でかしたで! ほな、勝負はお預けや。さいなら!」


 タキはダンジョンが崩れるのも構わず、大爆裂の魔法を展開する。壁に大きな穴を開けて、ダンジョンから逃げていった。


「待ちやがれ!」



 ダンジョンから出て後を追おうとしたが、姿が見えない。

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