第24話 天啓

 小型化した分、火力が弱体化している。その分を補いたい。


 大艦巨砲主義ではないが、大型キャノンがあるとちょっと違ってくるかなと。


 とにかく、大群を一網打尽にできる武器はほしい。


 案の定、ビーム兵器なんて概念がないラショーにはチンプンカンプンのようだったが。


「あと、それを近接武器にも展開させたい」

「ふむふむ」


 ラショーが、メモ書きをする。


「こんな感じでどうだ?」


 提案されたのは、文字通り大砲だった。背負うタイプの。ドラゴンの生首を、そのまま流用した感じだな。ブレスを吐く生首を担ぐイメージである。


「発想としては、近いな。けど、取り回しが難しすぎる」


 たしかに、無敵の強さを誇るだろう。誰しも憧れる、ロマン兵器だ。これを背負って動けと言うのは、無理があるだろう。なんのために小型軽量化したか、わからない。


 ロマンは大事である。とはいえ、実用性はもっと大事なのだ。ロマンを大事にした結果、オレたちはスーツを作り直しているのだから。


「銃って概念は、こっちにはあるのか?」


「まあな」と、ラショーが返した。銃があるなら、解説もうまくいくかも。


 思っていたより、ちゃんとした銃だ。拳銃は、銃身だけ作ってもらうことにする。内部構造はこちらに任せてくれと言っておいた。


「銃もホルスターじゃなくて、どっか盾とかにしまいたいな」


 これなら、盾を構えつつ撃てる。


「要は、小型にしたいんだな?」

「ああ。難しい注文だが、いけるか?」

「わかった、形だけ作ってみるさ。とはいえ、うまくいくとは」


 さすがのラショーも、頭を抱えた。


「サーセン」

「おうボウズ! ちょっと待っててくれな」


 チビドワーフが、木の板を持ってラショーに声をかける。


 待て。チビが手に持っているのって……。


「おい、修理してやれ」


 ラショーに呼ばれた弟子に、チビが板を渡した。弟子は、木の板に付いた鉄製のパーツをバラす。


「ああ、根本からボキって折れてるな。手すりに体重を載せたときにやらかしたんだろう」


 鉄の棒は、すっかりひん曲がっていた。


 棒をピカピカの新品に交換して、チビドワーフに返す。


「ありがとう! 行ってきます!」


 木の板を返してもらったチビが、金を払う。その後、チビは外に出て木の板に足を載せた。助走をつけて、板を走らせる。


「またな。気をつけていけよ」


 手を振りながら、ラショーがチビドワーフを見送った。


「ちょっと待て。あれはなんだ?」


 さっきのチビを見て、オレは目が釘付けに。


「スケボーだ! スケボーで遊んでやがる」

「あれは遊んでるんじゃねえよ。こっちの郵便屋だ。木の板に鉄の骨組みを付けた車輪をくっつけて、手紙を運搬しているんだ」


 へえ。メッセンジャーか。よく見ると、カバンを肩にかけている。


 王都は広い。走っているとどうしても息切れしたり、間に合わなかったりするという。それで、あんな乗り物が開発されたのだとか。


 オレのいた世界でもスケボーをやっているヤツらはいた。メッセンジャーとは恐れ入る。現実でも活用できるのでは? なんたらイーツとか。


「中には屋根とか壁の角とか手すりにボードを引っ掛けて滑り降りやがるヤツラもいるんだ。お行儀がいいとは言えんな」


 ガハハと、ドワーフは笑う。


「あれだ」

「ん? どうした」


 オレは、武器のコンセプトをラショーに告げる。


「とんでもねえことを考え出すな、お前は」


 ラショーが不敵な笑みを浮かべながら、アゴをさすった。


「よっしゃ。任せろ。お前がうなるようなものを作ってやっから」


 オレから金を受け取って、ラショーが手を打つ。


「とりあえず外側だけ作ってもらう」よう、ラショーと契約を交わした。

「エルフだけでなくオイラたちドワーフに相談してもらって、感謝しているぜ。存分に知恵を貸そう。ただ、すぐに結論を求めないでくれ」

「ありがとう、ラショー。勉強になった」


 ラショーと別れ、こちらは内部構造に精を出す。

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