第23話 パワードスーツの使いみち

 オレは、ドワーフのラショーにスーツの性能を見せる。

 空を舞い、ドワーフの力を押しのけ、装備品も砕いてみせた。

 結果、装備面のいい点と悪い点が見えてくる。


「軽いな。速度がある分、動きに重みがない」

「そういうコンセプトだからな」

「防御面は厳しいかもな」


 有事の際にシールドを装備するのがいいかもしれん、とのこと。


「バイザーではダメか? 少しでも軽くしたい」

「視界を確保したいなら」


 まず、頭部バイザーの装備が決まった。ラショーが弟子に言って、加工してもらっている。


「どうしても軽量化を望むなら、追加武装でいいんじゃねえかな? オイラに聞きたいのは、そのコンセプトでは?」

「実は、そうなんだ」


 もうスーツは、これでほぼ完成していた。追加武装をどう維持するか。


「やるなら、お前さんの鉄の馬を、装備品に変える構成だ。入れ子みたいに、上から着てもらう」


 追加装甲の案ねえ。


「うーん、そういうんじゃねえんだよなぁ」


 大型の魔物が相手なら、それもいいかと思うけど。


「ただ、オレは魔物と力比べがしたいわけじゃない」


 オレが大型魔獣と戦うなら、関節部分を折る。力に対して力で対抗というのは、燃費の面でも非効率に思えた。


「災害救助用のジャッキのような工具は、ほしいかもしれねえ。ただ、戦闘用に力の強さは重要視していないんだよ」

「そこまでパワーにはこだわっていないと?」

「身体強化に走ると、熱暴走が怖い。いつ破壊されるかわかったもんじゃない爆弾を抱えているようなもんだ」


 実際、ウェザーズ相手でもやばかったのである。ヤツ自体が、熱を誘発する攻撃を多用してきたから。


「わかった。ジャッキ案は、こちらで整理する。お前さんのスーツから派生することになるが、いいかい?」

「かまわないよ。というか、どうしてオレに聞くんだい?」

「いやな、軍事利用とかも考えないのかなってさ」


 ラショーから言われて、オレも納得する。


「たしかに、人間同士での争いに使われてしまうことも、考慮しなければいけないのか」 


 オレは、戦争が嫌いだ。とはいえ、いざ攻められるとそうも言っていられないだろう。


 敵は、モンスターだけではない。そう思い知らされた。


「ラショーは、オレの技術を軍事に使うのか?」

「まさか! こんなピーキーな装備、簡略化しても振り回されるだけだぜ!」


 時代が追いついていないらしい。第一、理屈がわからないという。


「前提条件として、『お前の世界の常識』を知らなければならない。それにどれくらいの知恵や学びが必要か。それこそ、何百年もの蓄積が必要だろうさ。それでも、身につかないかもしれない」


 そうなのか? 案外、融通がきかない世界なんだな。


「エンチャントがかかって、多少火力が上がった、程度なら扱えるだろう。けど、羽根もないのに飛んだり跳ねたりなんてのは、この世界じゃあ非常識だな」


 受け入れる頭はないだろう、とのこと。


「ワタシのせいかもね」


 うーんとうなっているのをアピールするためか、ニョンゴが浮きながら身体を傾ける。


「ニョンゴの?」

「新しい技術ができ上がったとしても、『すべては魔女の奇跡によってもたらされたのだ!』とか、『神のご意思に反する!』とか考える世界だから」


 ファンタジー世界って、割と現代知識にあっさり馴染むイメージがあった。「すごいすごい」といいつつも。何もかも異端と思われてしまうのが、普通の反応なのだろう。


「スーツは、外装だけ預けるよ。打ち直してもらえるかい?」


 ニョンゴが聞くと、「お安い御用だ」とラショーが返す。


「その際、内部構造とかが気になると思うが、情報は提供しよう。使えるかどうかはともかく」

「助かる。ただ、教わってもわかんねえと思うぞ」


 ひとまず、パワードスーツの外装強化は、すぐに行われた。


 当分は、予備のスーツでの戦闘になるな。


「話題を変えよう。お前さん的に、一番欲しい要素は?」

「熱性のキャノン砲かなぁ」

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