第22話 ドワーフの鍛冶屋へ
後日、オレは王都にあるというドワーフの鍛冶屋へ。
『ラショーの工房』か。フィリップ・ラショーから取ったのかしらねえ?
「なんでい? オイラは気に入ったやつにしか打たねえよ。悪いが、用事なら弟子にいいな」
いかついオッサンが、工房の奥からやってきた。
「ああ、オレたちはこういうもんだ」
オレは、冒険者カードを差し出す。
「待っていたぜ、
どうやら、話は通っていたみたいだ。
「あがってくれ」というので、工房の奥に通してもらう。
すごい武器類だ。魔法では加工がしにくい鉱石を、いとも簡単に鍛えている。
力だけではない。器用さも軍を抜いていた。
武器や鎧のどれも、多少マッシブなデザインなのは引っかかったが。
「どうだい、気に入ってくれたか?」
「エルフが仲間にいるからな。スマートな装備しか見てこなかったから、物珍しさに圧倒されている」
ガハハ、とドワーフは笑った。
「そうだろ? はじめて工房を見に来た客は、みんなそう言うんだ。でも、あんたはただ驚くだけじゃねえ。どうやったら自分に有力な装備となるか、ちゃんと品定めしている目だ。王妃殿下が気にいるわけだぜ」
「やけに王妃と仲がいいんだな?」
「おうよ! って、殿下から、なんも聞いていねえのかい?」
「いや……」
「あの方は、王都を仕切る国王様の妹君よ! ライコネンに嫁に行くまでは、先代王に黙って冒険者をやってたんだ。秒でバレたがな!」
ほほう、国王の関係者だったのか。
それで、ライコネンはもっとも重要な拠点だったと。
「オイラが昔、王妃殿下の装備を担当していたんだよ! 当時は姫殿下だったけどな! ガッハハ!」
なんと、王妃のためにビキニアーマーを作ったことがあるという。
「あの人、どんだけじゃじゃ馬だったのよ!?」
「人は、見かけによらないねぇ」
オレもニョンゴも、唖然となった。
「ま、結婚して冒険者は引退されたけどな。それまでは、『あたしより強い男じゃなきゃ、結婚しないんだから!』とか息巻いていたな。ライコネンに瞬殺されるまでは、自分が一番強いと信じて疑ってなかった」
そんな暴れ馬を、ライコネン国王が手懐けたと。
「オイラたちは、口々につぶやいていたよ。よくあんなゴリラと、結婚する気になったなってさ。なあ?」
他のドワーフ職人が、ラショーの言葉に「んだんだ」と相槌を打つ。
隣りにいる奥さんらしき方のほうがゴリ……いえ、他人の恋愛観には何も言いますまい。
「で、まだ関係は続いてんだ。あんたが気に入った冒険者を連れてきてくれたら、オイラが装備を作ってやるぜってさ」
工房の奥に入る。
「よお。で、パワードスーツだったな。見せてくれ」
「実は、これなんだけどね」
ニョンゴが、ドローンの底板からパワードスーツを放出した。
「驚かないんだな? ニョンゴを見ても」
「そういう使い魔がいるって、聞いていたからな」
また、オレが助けた人の中には工房の関係者も含まれていたらしい。
「命の恩人の頼みとあっちゃあさ、邪険になんてしねえよ。変わりもんなら、お互い様だ」
「ありがとう。で、スーツの状態はどうだ?」
オレは強化案を数点書いた、メモを見せる。
メモとスーツを交互に見ながら、ラショーはオレに言う。
「一番手っ取り早いのは、金属の量を増加させること。それだけで、どこまでも硬く、強くなる」
彼の言うとおりだ。
「でも、そうじゃねえんだろ? お前さんのコンセプトは、軽量化を狙った速度やパワーの上昇だ」
「ああ。そのための模索をしている」
金属量を増やすと、強くはなるが重くなる。
その重さを持ってしても、ウェザーズを相手にするのは厳しかった。
「しばらく、スーツの観察をしたい。コイツに何ができて、何ができないのか、何をさせてはいけないか、お前がコイツに何をさせたくないかを見定めたい。一度着てみて、ポテンシャルを見せてくれ」
「わかった」
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