第21話

 次の日の朝。

 

 ご飯を食べ終え、複製を行う。

 キュイン──ポポポンッ!


 薬草を9個つくる。

 まだ余裕ね。


 キュイン──ポンッ!

 追加でもう一個作る。

 私はレベルが上がった! 


 テレレッテテー

 薬草の複製もこれで最後になるのかな?


 いや、栽培が安定するまで、様子を見なきゃ。

 収納箱に薬草を9個入れ、鍵をかける。

 次は水撒きね。

 

 10分ぐらい水撒きをして、家の中に入る。


「ただいまー」

 と、言って、居間に向かう。


「おかえりなさい」

 と、座っていたカトレアさんが言った。


 私は収納箱の鍵をテーブルに置くと「収納箱の鍵、渡しておくね」


「はい、ありがとうね」

 と、カトレアさんは言って、鍵を手に取った。


 立ち上がると、ベッドの横の引出しに向かい、鍵をしまった。


「カトレアさん。薬草が育つまで、あとどれくらい掛かるの?」

「そうね。あと2ヶ月くらいかしら」


「え! そんなに掛るの?」

「ほとんど、自然任せだからね」


「そうか……いま次の定期便の分は確保してあるんだけど、その後は厳しそうね。明日、サイトスさんの所に行って、今回の定期便が終わったら、しばらく休むことを伝えておくわ」


「分かったわ。ミントちゃんの出来ること、早く見つかるといいわね」

「うん」


 その日の夜。

 明日の準備を済ませ、布団に入り、今日の整理をする。

 手持ちの薬草【1個】

 カトレアさん所有の薬草【60個】

 手持ちのお金【590P】


 いよいよ明日から一人でスタートか……。

 不安じゃないと言えば嘘になるけど、何だかとても、ウキウキして、前向きな気持ち。


 どんな毎日が待っているんだろ?

 

 次の日の昼。

 昼食を食べ終える。


「カトレアさん。このコッペパン、一個もらっていっていい?」

「どうぞ」

「ありがとう」


 私は空のお皿にコッペパンを乗せ、台所に運んだ。

 台所にお皿を置き、ラップを手にすると、コッペパンを包んだ。

 コッペパンを台所に置き、皿洗いを始める。


「拭くのは私がやるわ」

 と、カトレアさんが後ろから話しかけてきた。


「ありがとう」

 パッパッと手に着いた水を切り、コッペパンを手にする。


 居間に行き、椅子にかけてあったハンドバックを手にすると、コッペパンを入れた。

 昨日のうちに準備は済ませたし、あとはアラン君を待つだけね。


 特にやることもない。

 椅子に座り、頬杖をかく。


 何をしようか?

 うーん……とりあえず水撒きでもするか。

 

 外に出て、蛇口をひねる。

 水が勢いよく飛び出し、枯れた土を潤していく。

 早く、元気に育ってね。


 水を止め、ホースをまとめていると、気持ちいい風が吹いてきた。


 ホースを置いて、グーッと両手を伸ばし、大きく背伸びをする。


「あ、アラン君だ」


 アラン君が近づいてくる。


「気合、入ってるな」

「え?」

「背伸びしていたから」


「あぁ、風が気持ち良くて」

「そうだな。天気が良くて良かった」

「そうね」


「これ、ミントの分」

 と、アラン君は布の袋から写真を5枚取り出した。


「どれが必要か分からなかったから、全部、人数分用意した」

「お金は?」


「いらない」

「ありがとう」


 バックのチャックを開ける。


「見ないのか?」

「恥ずかしいから、いまはやめておく」

「なるほどな」


「もう行くの?」

「あぁ、カトレアさんにカメラと写真を渡したら、行こうかと」

「分かった。ちょっと待ってて、呼んでくる」


 私は家に戻り玄関を開けた。


「カトレアさーん。アラン君が来たー」

「はーい」

 と、居間の方から返事が聞こえる。


 私はまた玄関を出た。


 カトレアさんが玄関から出てくる。

 アラン君はカトレアさんに近づくと「カトレアさん、写真できました」


「ありがとう。2Pでいいかしら?」

「いえ、いりません」

「そう? ありがとうね」


 カトレアさんはアラン君から写真を受け取ると、「どれどれ」

 と、言って、パラパラと見だした。


「良く撮れているわね。これなんて」

 と、カトレアさんは言って、私に一枚の写真を見せる。


「わっ、ちょっとカトレアさん」


 慌てて、目を背ける。


「どうしたの?」

「恥ずかしかったから、まだ見てないの!」


 カトレアさんはクスッと笑うと「あら、ごめんなさいね」

「もう……」


 アラン君と写った写真、見ちゃったじゃない。

 恥ずかしいな、顔から火が出そう。


「カトレアさん。カメラ返します」

 と、アラン君はカトレアさんにカメラを渡した。


「はい。もう出るの?」

「はい。ミントは準備、出来ているのか?」

「うん、大丈夫よ」


「そうか、なら一緒に町に行こう」

「行く方向、同じなの?」

「あぁ」


「分かった。それじゃカトレアさん、行ってくるね!」

 カトレアさんはニコッと笑うと「行ってらっしゃい」

 

 二人、肩を並べて歩き出す。


 歩きながらも、後ろを見ながら、カトレアさんに手を振った。

「転ぶわよー」

「はーい」


 前を向き、歩きだす。


「アラン君」

 私はアラン君に手を差し出し「町に着くまで」


 アラン君は黙って、私の手を握った。

 アラン君の温かい手の温もりが伝わってくる。


 町に着けば、この手の温もりは、すぐに消えてしまうかもしれない。

 だけど、大丈夫。


 きっと胸の奥の温かさは、離ればなれになっても、消えないと思うから。

 頑張るからね、アラン君!

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