第10話
次の日の昼過ぎ。
玄関からノックの音が聞こえてくる。
誰だろ?
私は玄関に向かい、ドアを開けた。
昨日、私達を怒った看護婦さんが立っている。
「すみません。こちらにアランさん、来ていないですか?」
「いえ、来ていませんよ。アラン君がどうしたんですか?」
「見当たらないの。まだ完治はしていないのに、どこに行ったのかしら? あ、すみません。居ないのでしたら、大丈夫です」
ドアを閉める。
アラン君、どこに行ったんだろ……まさか!
慌てて、外に飛びさす。
「よう」
裏の方から、アラン君が2mぐらいの大きな猪の形をした魔物を、
両手で引っ張りながら歩いてくる。
「これ見ろよ。俺が仕留めたんだぜ」
と、屈託のない笑顔で、アラン君は言うと、魔物をドサッと地面に置いた。
「ん? 固まって、どうしたんだ?」
「馬鹿……心配したじゃない!」
安堵から、涙が零れおちてくる。
アラン君は私に近づくと「悪い、どうしても、出来るってところを証明したかったんだ」
「そんなことより、命の方が大事でしょ!」
「うん、確かに。今度から気をつける」
「絶対だよ?」
と言って、袖で涙を拭う。
「あぁ、絶対」
「みんな、心配したんだからね。看護婦さんだって家に来たのよ」
「げっ……それは、まずい」
「こっ酷く叱られるといいわ」
「ひでぇーな」
二人でクスッと笑う。
「明日は様子をみて、明後日また来るから。いいよな?」
「よろしくお願いします」
「かしこまりました」
薬草を8個つくり、アラン君に半分、渡す。
「ありがとう」
「あと、お金」
と言って、私がバックを開けたとき「今日の分のお金はいいよ」
「そう?」
と、言って、バックを閉じる。
「じゃあ、状況が悪化する前に帰るわ」
「もう遅いと思うけどね」
「そういうなよ」
と、アラン君は苦笑し、帰って行った。
アラン君の姿が見えなくなるまで、見送り、振り返る。
「あ……これ、どうするのよ?」
家に入ると「カトレアさーん」
居間からカトレアさんが顔を出す。
「どうしたの?」
「アラン君が来て、『これ見ろよ。俺が仕留めたんだぜ』って猪みたいの置いて帰った」
「あら、アラン君が来ていたの?」
「うん、病院を抜け出しきたみたい」
「まぁ……。無事で良かったわね」
「本当よ。屈託のない笑顔で言うもんだから、ちょっと腹も立ったわ」
カトレアさんはクスッと笑うと「よっぽど嬉しかったのね」
「まったく……」
「ところで、その魔物は?」
「そうそう。ついてきて」
外に出て、カトレアさんに魔物をみせる。
「あらまあ……」
「こんな大きいの、どうしよう?」
「これ、食べられるやつよ」
「え?」
「捌いて頂きましょう。手伝って」
「はーい」
台所から包丁を持ってきて、カトレアさんに渡す。
「ところでカトレアさん。捌き方、分かるの?」
「えぇ、もちろん」
カトレアさんは要領よく、魔物の身を剥いでいく。
私は見ることができず、運ぶ係に徹していた。
30分位経っただろうか?
捌きが完了する。
「カトレアさん、料理人だったの?」
「えぇ、旦那と結婚する前の話だけどね。さて、家に入りましょうかね」
「うん」
寝る準備を済ませ、布団に入り、今日の整理をする。
手持ちの薬草【34個】
手持ちのお金【154P】
依頼の期限【あと2日】
久しぶりのお肉、美味しかったな~。
まだ沢山、余っているから、楽しみだ。
よし、明日も頑張るぞ~。
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