第5話

 次の日の朝。

 早速、複製をしてみる。

 薬草を1個、ハンドバックから取り出し、6個欲しいと思ってみる。


 薬草が光出し、

 キュイン──ポポポンッ!

 薬草が6個出てきた。


 あれ? クラクラしない?

 もう一個いけるのかしら?


 試してみる。

 キュイン──ポンッ!


 もう一個、複製が出来た!

 やったー

 増やせる量が増えたぞー


 でも何で?

 レベルアップみたいのがあるのかしら?

 だったら、テレレッテテーってファンファーレぐらい欲しいわ

 地味すぎる!


 まぁいい、それは私が勝手につける!

 さて、今日の複製はこれぐらいにしますか。


 さすがにハンドバックには入り切らないから、1個は残して後は外に隠してっと……。

 よし!

 収納箱が欲しいわね。

 

 家に入ると、カトレアさんが驚いた顔で「あ ら、外にいたの?」

「うん、早く起きてしまったので、散歩に」


「魔物がいるから気をつけなさいよ」

「うん。ところで、カトレアさん。相談があるんだけど」

「相談?」

「収納箱を買って、外に置いていい?」


「外? 中でいいわよ」

「うぅん、汚しちゃうから外で良い」


「そう。外に置くなら、鍵付きのにした方がいいわよ」

「うん、ありがとう」


「お金はちょっと待っていて、持ってくるから」

「あ、大丈夫です。それぐらいはありますから」

「そう? 遠慮しなくていいのよ」


「うん、ありがとう」

「さて、朝ご飯の準備をしましょうか」

「うん!」


 朝ごはんを食べ始める。

「カトレアさん。ご飯食べたら私、クレマチスの町に買い物に行ってくるね」

「一人で大丈夫?」

「うん、大丈夫」


「ミントちゃん、ホワホワしているから、少し心配よ」

「き、気をつけます」

「うん、気を付けてね」


「出掛ける前に、台車みたいのないですか?」

「昔、薬草を運んでいた時に、使っていた物があるわよ。用意しとくね」

「お願いします」


 木製の手押し台車に薬草を乗せて、町へと向かう。

 えっと、まずは研究室に行こう。

 言われたとおり、北に真っ直ぐ進んでいくと、細い路地裏に辿り着いた。


 この奥? 大丈夫かしら?

 とりあえず奥に進んでみると、他の家に隠れるぐらいの小さな建物があり、確かに薬剤研究所と書かれた看板があった。

 でもこれって、すぐに分かるのかしら?


 さて、居るかな?

 インターホンを押してみる。


 ガチャ ドアが開いてサイトスさんが顔を出す。

「おぉ、えっと……」

「あ、ミントです」

「ミントさん、お入りください」


 サイトスさんがドアを限界まで開き、支えてくれた。

「お邪魔します」


 中は薬品の臭いが漂い、ビーカーや試験管など、研究に必要なものが、其処彼処に置かれていた。

 机の上は本が散らばっていて、物が置けるような状態ではなかった。


「すみません、散らかっていて。いま退かします」

 サイトスさんはそう言って、本を本棚に片づけ始めた。

 手伝いたいけど……うん、やめておこう。


「お待たせしました。いまお茶を持ってくるので、どうぞ、お座りください」

「ありがとうございます」


 ──サイトスさんが戻ってくる。

 サイトスさんは湯呑を並べると、緑茶を注いでくれた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」


「私の名前はご存知でしたっけ?」

「はい。この研究所はサイトスさん一人ですか?」


「はい。昔は違う場所に、もっと大きい研究所があったのですが、マイフィ夫婦の薬草が無くなり、需要と供給のバランスが崩れ、薬草研究が困難になって、廃れてしまったのです」


「そうだったんですね。廃れてしまったのに、なぜサイトスさんは続けているんですか?」

「薬草学を学んだことを活かし、私の力で沢山の人を救いたい。それが私の夢だからです」

 

「ところでミントさん、今日はどういった用件で?」

「あ、薬草が用意できたんで、持ってきました」


 サイトスさんは椅子から身を乗り出すように立ち上がり、「なんですと!」

 なんですと?


「ほ、本当ですか! でもどうやって?」

「えっ、えっと……」


「あ、ごめんなさい。ついつい興奮してしまって。貴重な薬草、何かしら事情がありますよね」

 何やら闇ルートで手に入れたみたいになっている?


「もう何も聞きません。ただ犯罪に手を染めないで下さいね」

「はい、そこは大丈夫です。安心してください」


「分かりました。マイフィさんとこに住んでいるようですし、信用します。では早速、物を見せて頂きたい」


 私は立ち上がり、台車から薬草を持ち上げ、机に置いた。

 サイトスさんが1つ薬草を手に取り、マジマジと見つめている。


「うむ、確かに」

 サイトスさんはズボンのポケットに手を入れ、財布を取り出した。

「お代は10個で、150Pでいいですか?」


「え? 150P?」

「足りないですか?」


「いえいえ、思ったより高かったので、びっくりしてしまって」

 サイトスさんはニコリと笑うと「これぐらい出して、当然です」

 

 サイトスさんからお金を受け取り「ありがとうございます」

「厚かましいお願いかもしれませんが、いまの研究が上手くいけば、更に薬草が必要になるかと思います。8日後に運送屋を向かわせますので、30個ほど追加でご用意頂くことは可能ですか?」


「はい、大丈夫だと思います!」

「期待しています」


 サイトスさんは白衣のポケットに手を突っ込み、液体の入った小瓶1本を取り出し、

「そうそう、これ試作品なので、効果は薄いですが、飲むだけで傷を癒す回復薬を差し上げます」


「いいんですか?」

「はい、今から研究するのは、もっと効果が出ると思うので」

「ありがとうございます」

 と、言って受け取り、ワンピースのポケットに入れる。


「では、失礼します」

 と、頭を下げると、台車を押して外に出た。

 

 次は雑貨屋に行くか。

 狭い路地裏を抜け、雑貨屋を探して歩きだす。


 思ったより、お金が手に入ったな。

 そういえば、魔物退治を傭兵に依頼するのには、どうやって、いくらぐらい掛るんだろ?


 あ、あそこに男の人がいる。聞いてみよ。

「すみません」

「はい?」

「この町で傭兵を雇うとしたら、どこで手続きすればいいんですか?」


「あぁ、仲介屋があるんだよ」

 男の人は東を指差し「あっちに真っ直ぐ言って、十字路を右に行けば、看板があるから分かるよ」

 と、教えてくれた。


「ありがとうございます。その近くに雑貨屋あります?」

「近くではないけど、その通りを真っ直ぐ行けばあるよ」

「ありがとうございます」

 と、頭を下げると、早速、言われた道を歩いてみる。


 あった、あった

 営業してるのかな?

 ドアを軽く押してみる。


 ギィーと音が鳴り、開いた。

「いらっしゃい」

 奥のカウンターの方から、男が声をかけてくる。


 決して広くはない薄暗い店内に、木造のテーブルや椅子が、所々に置かれている。

 こういう場所、苦手……。

 とりあえず、カウンターに行ってみる。


「お譲ちゃん一人?」

「えぇ」

「どういった御用件で?」

「傭兵を雇うにはいくらぐらい掛ります?」

「内容にもよるけど、一日、一人 100Pは掛るよ」


「そんなに!」

「命が掛っているかね」

「そうですね。ありがとうございます」

 と、礼を言うと、そそくさと外に出た。

 残念だけど、傭兵は後回しね。

 

 次は雑貨屋。

 教えてもらったとおり、真っ直ぐ進んでみる──

 あった!

 ドアには猫をモチーフにしたドアベルが飾られていた。


 何あれ可愛い!

 早速、ドアを開けると綺麗な音色で鈴が鳴った。

「いらっしゃいませ」

 動物の人形やアクセサリー、文房具や生活用品。

 色々と可愛いものが、ズラリと並んでいる。


 キュンキュンしちゃう……。

 おっと、探しものは収納箱だった。

 店をグルッと回って探してみる──。

 あった、あった。


 色やサイズ、いろいろあるのね。

 お金は貯めておきたいし、少し大き目で、一番安いのにするか……。

 これぐらいかな?

 片腕を伸ばしたぐらいの長さの鍵付き収納庫を両手で持って、レジに向かう。


「いらっしゃいませ。こちら30Pになります」

 バックから財布を取り出し、お金を支払う。

「ありがとうございました」

 収納箱を台車に乗せ、店を出た。

 さて、帰るか。

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