第2話

 朝になり目が覚める。

 台所に行って顔を洗う。

 ガサガサ……


 ま、まさか。この気配は……。

 ゴキブリ!

 辺りを恐る恐る見渡す。


 いた!

 見失わないように、目で追いながら、近くにあったハエたたきを装備する。


 そして──。

 パチンっ!


「ちっ」


 私の攻撃にゴキブリは気付き飛んで逃げた──。

 壁に張り付く。


「いまだ!」


 ゴキブリは私の一撃にやられ、壁から落ちていった。


「ふ、完全勝利」

「ミントちゃん、何やっているの?」


 後ろを振り向くと、驚いた表情をしたカトレアさんが立っていた。


「いや……、ここにもゴキブリがいるんだなって、退治を」


 カトレアさんはクスッと笑うと「そんなのどこにでもいるわよ」


「そ、そうですね。ははは」

「さて、ご飯にしましょうか」

「はい、手伝います」

 

 食器を並べて、コッペパンを置く。

 カトレアさんは? よし、見ていない。

 昨日の復習だ。


 パンを手に取り、欲しいと思ってみる。

 キュイン──ポンッ!


 一個コッペパンが現れた。

 よし、出来た!


「あら、そのパン、どうしたの?」

「あ、これは……」


 カトレアさんは多分、良い人。

 だけど何があるか分からないし、内緒にしておいた方がいいわよね?


「私のハンドバックに残っていたやつです」

「そう」

 と、カトレアさんは返事をして、机に水を机に置くと「食べましょ」

「はい」


 パンを増やせるのは確実。

 お金はダメ。

 でもお金になりそうな何か増やせないかしら?


 石は出来たけど、売れる石じゃなければ価値はない。

 この家に宝石は無さそうだし……。


 木の枝を増やしたってね……何かできるほど、器用ではない。


 加工済みの何かを増やせれば、売れそうだけどボールペンを増やそうとして、気絶したからな。今は試す気になれないし……。

 

 そういえば昨日、薬草を栽培して生活していたって言っていたわよね。

 薬草、増やせないかしら?


「ボーッとしてどうしたの?」

「あ、ちょっと考え事を。ねぇ、カトレアさん。薬草ってまだ余ってたりします?」


「どうだったかしら? ほとんど売ってしまったからね。あとで探してみるわ」


「お願いします」

「でも、どうして欲しいの?」

「試したいことがあるんです」


「そう、怪我が痛むのかと思って心配したわ」

「大丈夫です。ありがとうございます。」


「ところで、あなた年齢は?」

「16歳です」

「あら、思っていたより上だったのね」


「いくつだと思っていたんです?」

「13歳くらいかしら」

「そうですか……」


 若く見られるのはいいけど、複雑


「ごめんなさいね。その円らの瞳に小顔が可愛らしくて」

「ありがとうございます」


「髪の毛、長いのに、綺麗な金髪ね」

「母譲りなんです」


「そうなのね。早く帰る方法、見つかるといいわね」

「はい」


 帰る方法か……元の世界は今頃、どうなっているのかしら?

 

 食事を食べ終え、食器を洗う。


「ミントちゃん、あったわよ」


 カトレアさんがホウレンソウのような葉っぱを持って、近づいてくる。


「1個しかなかったけど」

「ありがとうござます」


 薬草を受け取りハンドバックに入れた。


 朝食の片づけを終えてから外に出る。

 ハンドバックから薬草を取りだし、増えてと思ってみる。


 薬草が光出し、

 キュイン──ポンッ!

 もう一つ薬草が増えた。


 ゲット! ガッツポーズをしてみる。

 あとはどのぐらい増やせるかね。

 さぁ実験開始よ!

 

 数時間後──バタンキュー


「ミントちゃん! ミントちゃん!」


 体が揺らされる。

 目を覚ますと、心配そうにカトレアさんがこちらを見ていた。


「カトレアさん?」

「まったく、あなたまた、外で倒れていたのよ」

「あちゃ……」


「大丈夫? お医者さんに診てもらった方が良いんじゃない?」

「いえ、失敗しただけなので大丈夫です」


「なんだか良く分からないけど、今日はもう休んでいなさい。お手伝いとか良いから」

「すみません」と、頭を下げる。


 カトレアさんは私の頭を撫でると、「大丈夫よ。ただ心配させないで」

「分かりました」

 

 その日の夜

 布団に入り、今日の整理をする。

 今日、複製出来たもの【パン、薬草】

 増えた薬草の数【薬草 4個】

 一気に複製出来た個数【3個】

 複製出来なかった回数【1回】


 分かったこと。

 ①複製できる回数は限られている。

 ②一気にやると疲れる。

 ③失敗も多分、カウントされる。

 ④過度の複製をすると気絶する。

 ⑤一日休めば、複製出来る個数は回復する。

 

 慎重にやらないと……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る