第69話 アクリスはモキュッとニョコパキなの
またこれだ……
心臓が熱い、掻きむしりたくなる。
分かってても、そんなものは表面的なもの、自分を無意識に掴み取られる時後手に回される。気付いた時にはもう遅い。
呼び戻せたって、起こったことを無かったことにできるわけではない。起こった事象は、刻み込まれるのだから。
チャリスだって、愛したいだけ、壊したいだけだったはずなのに。
チャリスは、魔法がやばくたって、本体は脆弱なんだ。
俺は、ぼんやりとした視界の中、ボタボタと、濁った液体を滴らせているチャリスを見ていた。
魔法陣なのか、螺旋状のものが視界の中を仕切りに横切っていく。
チカッ…… キラッ……
「…… んん、お主…… それは一体何をしておる?」
(…… モキュッと…… そうなの、色は決まってないの)
デウスルトは、様々なものを出し切ったであろう痩せ細ったチャリスを投げ捨てて、色濃い煙を吐き出しながらこちらをねっとりと見てきている。
アクリスの周りでは、クラゲ達がはしゃぎだし、色を様々変えていっている。
「くっ、チャリっちは、やっぱりダメっすね。もっと自分に興味を持つべきっすよ! リテラっち、ここはウチに蘇生……? それはなんすか?」
キュリオは、チャリスのところに駆け寄っていた。
その周りにも、色めくクラゲ達が飛び交っている。
キュリオの言葉を聞いて、虚ろな視界から意識を戻してみると、白く光り輝く雲が広がっていっている。
「あー…… これは、そうか。まぁ、しょうがない…… しょうもないからだな」
世界をどうにかしようったって、結局世界なんてどうでもよくなる。
フラッシュバックしてくる。目の前の世界も守れない、アクリスに何も言い返せないな。
まぁ、出てくるもんはしょうがない。俺はもはや世界を守る側の人間とも言えないし、好きにするか、無知の赴くままに。
空が、視界の奥から、どよめいてきている。波打つ漆黒の暗雲と共に彩りの輝きを携えて……
「ふぅ、さっさと済ませよう。赴くままとはいえ、
俺は、白く光る雲を集めていき、杖を形成してみる。
チャリスの方へと向け、蘇生魔法を展開させようと――
「リテラっち、いいっすよ、ウチが蘇生してみるっす」
チャリスに寄り添うキュリオが俺に向かって左手を広げて笑みを浮かべている。
「だいじょ…… ふふ、そうか、じゃあ、お願いするよ」
(…… ニョコニョコ、パキパキと……)
今のキュリオではと思ったが、そうかアクリスも干渉してくれるのか。その組み合わせなら大丈夫そうだ。
出会いと別れがあるように、悲しみと喜び、後悔と気付きっていうのも、ウラオモテ、身に染みるよ。
「その白い…… その輝き、あぁ、忌々しい色じゃなぁ」
「デウスルト、あんたはもう何もしない事をおすすめするよ…… 怠惰がいいんだろう? 俺の範囲内にいる限り、お前は、もはや、ただのデータにしか過ぎないんだから」
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