第65話 アクリスは無力なの
デウスルト様は、紫色のガスを吐き出し怪訝な顔でチャリスを見ている。
(…………)
アクリスも、チャリスの方へと顔を向けている。
アクリスから飛び出すクラゲは変わらず降り注ぎ、チャリスを中心とした漆黒の渦に飲み込まれていっている。
「なぜ面倒なことをする? 汚穢を吐き出させない? わし以外のところで事象を停滞させるんじゃない」
(結局、色は消えていく、色は塗り替えられるもの……)
アクリスは、ミニヴァンさんを見た後、結界の中で立ち上がり、辺りを見回している。
ミニヴァンさんは、地面に顔をめり込ませたままだ。デウスルト様の魔力に汚染されている。
チャリスは、静かだ。黒球の中アメーバ状に歪む姿はそこにいるようでそこにいない。
アクリスはクラゲをミニヴァンさんの方にも飛ばしているが、光り輝くクラゲ達は、漆黒の球へと導かれていく。トブンと潜り、歪みながらチャリスへと向かい続けているように見える。
(…………)
「アクリスには、今どう見えてるんだ?」
俺はアクリスに魔法を飛ばしていく。
アクリスは顔をコチラに向ける。
足元のクラゲ達は赤く淡く光り輝き、飛び上がっている。
(私は決められたことをするしかないの)
「その先に、お前の望みもあるのか?」
(色は簡単に変わる、だから私は関与しないの)
「面倒じゃ、何のためにこの村がある、お前達がおるのだ、わしが何もしないためじゃろう」
「何だか落ち着いてきた…… いや引きずられてるっすか?」
キュリオは、少し疲れたように、自分の背の丈くらいの杖に寄りかかり座り込んでいる。
チャリスの漆黒の周りにあるホライズンの揺れ動きが激しくなっている。
俺の魔力も、いや身体も徐々に吸い込まれている。おそらく、この場のみんなも。
漆黒の渦の中から、チャリスの星の散りばめられた杖が出てくる、先端は泉に向けられ、肉体を歪ませながら徐々に元のチャリスが出てきている。
「まさかわしは動いている? 動かしておるのか? 元に戻るのにどれほどの労力がかかると、なんとだるい、憂鬱じゃ、これは罪じゃ、そうじゃろう、動かすものが悪いのじゃ」
デウスルト様は、確かに、湾曲した白い台座から少しずつ動いている。いや引きずられている。みなチャリスの方へと。
(…………)
「ディアディアディア、わしを動かすもの、わしが動いているのに、怠惰なもの、それは万死じゃ、わしが動くということはそういうことじゃろう、認識の次元が違う、お主らは留まり続ければ良い」
デウスルト様の周りからは水が弾けていき、ドス黒い紫の飛沫を泥に交え広がっていく。
俺やキュリオの周りを過ぎ、振り向けば一面を紫に染めながら、紫色の粘液に埋もれたミニヴァンさんがいた。
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