第54話 アクリスはオエってするの

 デウスルト様のありがたいお水とやらは、明らかにいつもの水よりも、尋常じゃない魔力で溢れかえっている。

 今までの花嫁たちが、耐えられなかった魔力贈与っていうのはこれのことなんだろうか?

 これを、毎日、毎食、飲まされてたとあっては、色んな意味で耐えられなくなってしまうのかもしれない。


「デ、デウスルト様のありがたーいお水は、飲むなんて勿体なさすぎると思うんですよねぇ、俺。これは永久保存版にして持ち帰らせていただきたいなぁ…… なんて」

「お主…… 先ほどの話を理解できないような知能レベルなのか? わしに声を発せさせる…… はあぁぁぁ、かったるいのぉ、のぉ?」

「そっの通ーーぉりンン、ン、ンファーーー!」


 うるせー! ビスキス!

 こい…… デウスルト様がつっこみたくなるような水をお渡しになったからだろうが、このきしょ…… モフモフなぬいぐるみが!

 泉が荒立ってきてる…… 小便小僧を小刻みに揺らしながら、放出される小便はクルクルと新体操のリボンのような軌跡を描き、デウスルト様に浴びせられている。

 デウスルト様の、湿ったモフモフも逆立ち、魔力が溢れ出してきてる。

 こんなパワハラで戦闘が始まっちまうのか…… 杖が重い、だるい――


「あはぁ、いただきましたぁ」


 見ると、チャリスは見事に飲み干している。

 キュリオも、それをみて焦り、出会って史上1番のブサイクな顔になりながらゴブレットに口をつけようとしてる。

 こいつら、マジか!?


「おぉ、なかなかの飲みっぷりじゃ。美味しかろう。その赤髪の娘、名はなんと言うたかの?」

「デッウスルト様っ、チャリスですっ!」

「おぉ、チャリス、いい名だ。ちゃんと喋れるとは素晴らしい。お主を迎えよう」


 デウスルト様の大きな掌が、チャリスの前に添えられ、チャリスはその上に乗り、肩の上へと運ばれ、お互いの魔力が絡まり異様な色彩を放っていく。

 チャリスはちょこんと座り、足をモジモジしながら身体をゾワつかせている。

 チャリスを見るデウスルト様の瞳がギトギトしていく。

 おかしい…… 魔力がうまく引き出せない、やる気が起きない……

 頭が回らない、状況が…… 整理できない。


「アケアケアケ、わしは上機嫌じゃ。ぜひ、アクリスに加え、チャリスのことも祝うがよい、我が意を汲み取るがよい。あとはもうわかろう」

「ふふふ、リテラ様、キュリオちゃん、楽しみましょーよぉ♪」


 な、なんだ…… めまい、頭痛、腹が、吐き気がひどい。尿意が…… 我慢できない。


「アケアケっ、そんな汲み取りはいらん。お主のには興味ないんじゃ。美少女のな、魔力に溺れた、それを求めてるんじゃよ。汲み取れ。わしに何もさせるな。美しきものの汚穢おわいを献上せよ」

「ちょっ、リテラっち! どうしたんすか? ふざけてる時じゃな――」


 デウスルト様の…… キュリオの声が…… 遠のいてく。

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