第50話 アクリスの姉弟子はちょっと変わってるの
俺らは、アクリスとミニヴァンさんと別れ、夕飯をご馳走になっていた。
「あぁ、幸せだ。なんか、久しぶりに、『食事』って感じのご飯が食える。この白身魚とか、少し塩っ辛いが、ムニエルとかにしても美味そうだ」
「ムニエル? また大人な言葉っすか? まったく食事中にまで…… 頭蓋骨の中お花畑なんすか?」
「お前な、俺のイメージどうなってんのかこっちこそお前の頭蓋骨の中覗いてみたいわ。料理名だよ。材料が揃うなら作ってやる、お前の目の前で食ってやるよ」
「なんですか? 私も、材料集めならお手伝いしますよ」
「「大丈夫」っす」
キュリオも、フローレンスから今までのチャリスの野生性、雑食性にはトラウマを覚えているらしい。ゲテモノの定義は、異世界でもそんなには大差ないようだ。
チャリスは、OLがグミとか持ち歩くように、小腹が空いた時のためポケットに、足のたくさん生えた生物を入れている。チャリスいわく、にが甘くてクセになるらしい。
「なんか、ウチはアクリっちを祝いたいと思える気がしないっすよ。アクリっちはそれで納得、幸せなんすかね? 要はアクリっちを生贄にしてるようなもんに感じるっすけど」
「まぁ、まだ情報が少ないしなんとも言えない。それにそれはこの村の文化とかを知らない俺らの価値観だ。でも、外部の価値観を入れ込むのも大事だとは思うよ。俺はそういうのは嫌いじゃない」
「アクリスちゃんは、ミニヴァン様のことは好きそうでしたよ? 私だったら魔力と破壊があればあとはなんでもいいんです。その時見えるものが綺麗であれば死とか幸せとかどうでもいいんです。アクリスちゃんもきっと見えなくても聞こえなくてもそうなんですよっ」
チャリスは、食べかけの口の中をおっ広げながら、感じ入っている。
こいつは、自分の赤髪もよく食っている。個性的思想だし、かわいい顔の無駄遣いだ。
「そんなんもったいないっすよ。生きてりゃ色んなことがある。惹きつけられたものを細かく切り刻んで、ほじくり返してこそぎとってやれば、そこに快感があるっす。その先に終わりなんてないっすよ」
「もちろん、私は、大好きなものは全部壊したいですよ♪ リテラ様もキュリオちゃんも、いつか一緒に壊れてくれますよね?」
キュリオも、フォークを握りしめて、口の中で食べ物を何度も咀嚼しながら不敵な笑みをこぼしている。
2人ともなんでこんなこえーの?
「まぁ、まだ祝いの日まで時間はある。それまで、いろいろと見て回ろう。それで決めたお前らの行動に俺はとやかくいう権利はない。自分よがりでなければいいし、対立したら心ゆくまで対立しよう」
「ウィヒヒヒ、後で文句言わないでくださいっすよ?」
「リテラ様は、私のために壊れてくれるってことでいいんですか?」
「うぅん、チャリスさんはそう受け取る? そ、そくだな、お前は今まで通り、ひとまず『人の近くでは魔法を使わないようにしよ』だ」
何が正解なんてわからない、どうせ祝うなら心から祝えるようにしていこうじゃないか。
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