第48話 アクリスはモノとお友達なの
「リテラ様、ドラゴンのハミガミは自分の炎で熱消毒しているらしいですよ!」
チャリスは、ドヤ顔をしながらしょんぼりしていた俺にドラゴンのトリビアを教えてくれている。
「お前は本当…… まぁ、そうだな、いつかお前と一緒にドラゴン見つけてみたいな」
チャリスは、ドラゴンを想像しているんだろうか、目をキラキラさせながら、魔力を少しあげていっている。
「お? おおぅ? このゴーグル、文字が流れてるっすよ? どうなってんすか?」
キュリオの声の方を見ると、いつのまにかアクリスのゴーグルと顔を行ったり来たりしながら、言葉の返答を待たずにゴーグルを引っ張りあげようとしている。
アクリスは、急な来襲者に対して本を落としながらも、必死にゴーグルを抑えて抗っていた。
「へー、『やめてなのー』って、思ったことと連動してるってことですか? おもしろいっす、おもしろいっすよー!」
ほぉ、それは確かに面白そうだ。俺もキュリオに加勢しようかな。
もともとは、なぜかあいつに俺の春の訪れは邪魔されたらしいしな。
俺がゴーグルを覗こうとすると、キュリオの掴んでいた手が外れ、アクリスの額にいい音を奏でながら勢いよく戻っていっていた。
(うへーん、痛いなの〜)
うぉ、確かになんなんだこのオーバーテクノロジー、リープフロッグというか、オーパーツというか、この世界には、文化レベル的にありえないものがたまにある。おそらく、どの時代かの異世界人がたまに影響を及ぼしているんだろうか、これもその類かもしれない。
「それは、アクリスが作ったもんだよ。副産物みたいなもんだね」
え、これ、アクリスが作ったの?
副産物って、主産物は、なんなんだ、量子コンピューターの魔力版でも作ってるのか?
ミニヴァンさんは、どきなと言わんばかりに、群がる俺らと、アクリスの間に入り少し赤くなったおでこをさすってあげている。
(私が悪い子だから)
「アクリス、この人たちはお前の
ミニヴァンさんは、指に魔力を込めアクリスの掌に文字のようなものを何度も描きながら喋っている。
それよりも、人身御供? 結婚的な話ではなかったのか?
(そうなの)
「ミニヴァンさん、デウスルト様は人ではないのですか?」
ミニヴァンさんは、アクリスに落ちた本を返してやると、年季の入った重そうな瞼を少しあげ、俺のことを見つめてきた。
「デウスルト様は、そんな比較するようなお方じゃないよ。ただ、取って食ったりとかそう言うわけじゃない。デウスルト様にその身を預け捧げるってことだよ」
「そんなん、アクリっちはそれを望んでいるっすか?」
「望むもなにも、こうやって普通の生活が保証される。それが一番いいはずさ」
ミニヴァンさんは、ゴーグルをさすっているアクリスを見つめながら答えていた。
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