第47話 アクリスに関心を持つからなの

「かしこまりましたよ。メイド長」


 メイドさんは、10冊以上あるだろうか、山積みの本の元へと向かって行っている。

 男は俺だけ、こここそ、アピールチャンス。


 こほんっ。


「メイドさん、あなたの綺麗な腕にはその大荷物は不釣り合いですよ。よかったら俺に代わりに持たせてください。なーに、俺ですか? ハハハ、毎朝エルフ語新聞を読んでるだけのつまらない男ですよ」

「あら、ありがとうございます。でも、これでも私結構力持ちなんですよ。それっ!」


 俺でも重そうに見えるのに、軽々と持ち上げながら、メイドさんは自分でも驚いたようなかわいらしい顔をして、ほらねっと俺に微笑んでくれた。

 それなら最初から魔法でサポートすればよかったかぁ、どうなる俺のメイドさんルート分岐!?

 ん? あれ、なんか小さなクラゲがメイドさんにくっついてるな?


「このクラゲは?」


 俺はクラゲに少し触れようとすると――

 急になぜか俺の前でメイドさんは本を片手で支えながら少しスカートを摘んで、中身をあらわに黒い下着を見せてくれた

 な、なんなんだ、これ、ラッキースケベ? 俺の時代? モテ期到来か?

 こんな清純そうなメイドさん、なのにおパンツが黒、これはなかなか素晴らしいお仕事をされていると思います。

 メイドさんも小ぶりなお尻をフリフリしながら上目遣いで笑みを浮かべて俺のこと見てきているし、これってアオハル? いや桃春展開。ワンチャンどころか、ワンナイト? ワンナイトオール。

 チャリスとキュリオと別室にしてもらえてよかった。


「急にびっくりしましたが、安心してください。あなたのお気持ち、俺は受け止める準備はできています」

「え…… 急に何を言ってるんですか?」

「え? あなたのそのスカートの中へのお誘いですよ? さらにその中、あ、上にありますそのたわわな膨らみも、ぜひとも今夜拝見させ―― ぶっほ!」


 気づいたら、メイドさんは、白色のドロワーズを見せながら、俺のことを蹴り上げてきていた。

 俺は蹴り上げられ、天井を見ながら、小さなクラゲが飛んでいるのを見つける。

 てか、ドロワーズ? さっき履いてたか?

 メイドさんは、ゴキブリでも見るかのような目を俺に向け、それもそれであり…… いや部屋を去っていく。


「何やってんすか? 急にキャラ変して、スカートの中身勝手に妄想して、しかもそれ本人にぶっちゃけて蹴られるって、どんな高等プレイっすか? このエロ賢者さんは……」

「はひ? おみゃえ何言って……」

「ふー、全くあんただね、アクリス」


 ため息をつきながら、ミニヴァンさんはアクリスを見つめている。


「アクリス? おりぇ、きぇっかいもしてたはずなのに……」

「この子にそういうのは関係ない、というか関係なくされてしまうんだ」


 無力化ってことか? 俺の結界って、ちゃんと機能してること少なくないか? 大賢者なのに。

 いやそれよりも俺の桃春分岐ルートは……


「ほーぉ、そういう…… まぁまぁ、リテラっち、サキュバスでもフラれることあるみたいっすよ」

「? そうですよ。リテラ様っ、ドラゴンもゲップで鼻から炎出すこともあるみたいですよ」


 キュリオは察したようににやついている。

 なんかチャリスは、違うことを言ってる気もするが、今はどうでもいい。

 アクリスを見ると、広げた本に顔を埋めていた。

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